恋愛タイムパトリール24時!! 第五夜 未来予想図詐欺!遠距離男事件
恋愛タイムパトリール24時!! 第五夜
未来予想図詐欺!遠距離男事件
今回は接客業アンナさん (仮名)への取材を元に制作をしました。
過去の恋愛トラウマにとらわれ、「もう恋の仕方がわからない!」と恋愛迷宮を彷徨う、悩める独身女を救うべく今宵も““恋愛タイムパトリール“が登場だ!
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男「今日は話があって呼んだんだ」
女「え」
男「俺、君のことが……」
女「ウソ!」
男「えっ?!」
女「ウソでしょ、それ!」
男「いや……俺まだ何も言ってないんだけど」
女「思わせぶりはやめて!私にはわかるの、それがウソだって!!」
ガタン
男「おい、ちょっと、どうしたんだよ!?」
カツカツカツ……バタン
「はぁ、男ってなんですぐウソつくの?もう、信じらんない!!」
「はい、そこの君、止まりなさい。」
「男なんてみんなウソつき!ハトだってそうでしょ?!」
「ワシは、タイムパトリール!」
「過去の恋愛における失敗やモヤモヤをその時代にタイムトラベルすることで解消するポリスだ!」
「そんなのウソ!」
「えっ……」
「ワシは、嘘つきではなく……」
「……ウソじゃないの?ハトがしゃべってるけど。」
「うむ。その目で確かめるがよいぞ!」
「今から5年前、2012年にターーイムパトリーーーール!!」
♪マメ〜〜ン
—–2012年6月吉祥寺のとあるクラブ——
女「ミッチーおつかれ〜♥」
DJ男「ありがと、アンちゃん」
女「今日この後どうする〜?」
DJ男「そうだなぁ、疲れたから帰ろうかな」
女「オッケー!じゃあアンナごはん作るね♥」
「うわっ、DJ卓の横でこんな会話!!」
「痛いッ!周りの女どもの目線が痛いッ!!」
「そして、何よりもこの二人の存在が痛いッ!!」
「やだ……ミッチーだ♥」
ふらふらふら〜
「おっ、ちょい、待った!」
「そっちに行くな!この時代に干渉してはならん!!」
「はっ!そうだった、ミッチーはもう死んだんだった。」
(いや、死んではないだろう……)
女「えー、ミッチー明日大阪帰っちゃうの〜?」
DJ男「月曜アサイチで打ち合わせがあるんだ。アンちゃんごめん!」
「遠距離恋愛?!」
「遠距離と言うか……」
女「も〜っ!しょうがないなぁ……じゃあ、おわびに付き合ってくれる?」
DJ男「それは、だ〜め」
「?!」
「……え?付き合っていない?!」
「うん。明らかに付き合っているのに、認めてくれなかったんです」
「これに似た話が以前にもあったが、今回はなぜだか二人ともやけに楽しそうで、よけいに辛いぞ……」
「”付き合ってくれないこと”以外は、パーフェクトだったんです!」
「遠距離恋愛も気にならないほど楽しかった……♥」
「付き合ってくれなくても、”約束”してくれてたし……」
「約束……?」
女「まだ前の彼女と別れたこと気にしてるの〜?」
DJ男「ごめん、アンちゃん。この傷ついた心が癒えたら付き合おう?」
女「しょうがないな〜!わかったよ♥」
「わかったよ♥……って、おい!」
「どうしてこんな”ありもしない未来予想図”を信じてしまうんだ……」
「たしかに彼、他にもよく二人の未来のことを話してました」
「『結婚したら、どこに住もうか?』とか『子供は何人ほしい?』とか。」
「そうやって、思わせぶりを積み重ねて“ありもしない未来予想図”がまるで実現する未来かのように刷り込んでいったんだな……こいつは相当のワルだ」
DJ男「おわびに、今度の連休、大阪遊びに来なよ!うち泊まっていいし」
女「ほんと?」
DJ男「俺が案内するよ!」
女「うれしい♥」
♪ビーッ、ビーッ
「これは波乱の予感ッ……現場に急行だ!」
♪マメ〜〜ン
—–連休中の大阪・京都——
女「ちょーーーー楽しいッ♥」
DJ男「ほんと、アンちゃんといると俺も楽しいよ!」
女「やったー!うれしい♥」
ブチュー
「ピーッ!!ちょ、ここは日本です!!そこは鴨川です!!やめなさい!!」
ゼイゼイ……
「ああ、なんかマブしい。」
「あの頃の自分がマブしすぎて目がかすむ……うぇっうぇっ」
「号泣!!」
DJ男「夜ごはん、川床※予約しておいたんだ!」
女「ほんと?うれしい〜♥行ってみたかったんだ」
DJ男「この前、両親を連れて行ったんだけど、喜んでた」
女「ミッチーのご両親公認のお店だね!」
- 川床(かわどこ):川沿いにせり出した食事どころ。若干料金高めのいわゆる”イイ感じのお店”が多い。京都の鴨川沿いの夏の風物詩。
「こんな特別なシチュエーション用意されたら、とうとう付き合えるんだ!と思うじゃん!うぇっうぇっ」
「これは確かに……」
「”親を連れてきたお店”とか言われたら、私もついに親公認になっちゃうのかな?とか思うじゃん!」
「なんという、巧妙な言葉のマジック!!」
DJ男「……」
女「……ねぇ、ミッチー」
DJ男「なに?」
女「私、そろそろミッチーの彼女になってもいいかな?」
DJ男「ごめん、俺まだ前の彼女の傷が……」
「うわー!京都まで来てもダメ!川床まで来てもダメ!って……」
「この時食べた、はも、美味しかったなぁ……うぇっうぇっ」
女「前の彼女との遠距離恋愛がつらかったなら、私大阪に住むよ!仕事だってこっちで探すし」
DJ男「そういうことじゃないんだ」
女「だったら何なの?私、ミッチーと付き合えるならなんでも乗り越えられるよ!」
DJ男「君は前の彼女に似ているし、前の彼女と同じように他の男のところに行ってしまうんじゃないかって……」
女「そんなことないよ!」
DJ「そんなことなくなくない!」
女「なくなくなくない!」
「♪その頃のぼくらと言ったらいつもこんな調子だった〜」
「♪心のベストテン第一位はこんな曲だった〜うぇっうぇっ」
DJ男「アンちゃんのこと、好きだけど、やっぱり付き合えない」
女「両思いなのに〜うぇぇぇぇ」
「『好きだけど、付き合えない』って、実際、現代社会ではよっぽど”のっぴきならない理由”じゃないとあり得ないよな」
「ミッチーの様子からして、のっぴきならない理由じゃないと思う。つまり、他に好きな子がいるとか、すでに彼女がいるとか、きっと”自分都合の相手に言えない理由”なんだと思う」
「いまこうして見ると、すごくよくわかる。」
「真の理由はワシにもわからないが、ワシの経験上言えることは、”付き合えない理由に、昔の彼女の話を出す男は、キミに対して本気ではない”ってことだ」
「そっ……か……」
ぽろぽろぽろ
「ミッチーに対して”夢”で制裁を与える権利があるけど……」
「制裁はいいです」
「とても楽しかった思い出ばかりなので」
「そのかわりに、ひとつだけお願いがあります」
女「私、東京帰るね」
DJ男「わかった」
女「バイバイ、ミッチー。いままでありがとう。楽しかった」
DJ男「俺も楽しかった」
アナウンス「東京行き、こだま発車します」
プシュー
女「……」
アナウンス「京都〜、京都〜」
女「うわぁぁぁぁぁ〜ん」
ドドドドドドド……
「えッ?!東京行きの切符買ってるのに、京都で下車してからの全力ダッシュ?!」
「この後、ひとりで京都観光したんです」
「この連休を自分にとって、少しでも実りあるものにしたかったんだと思います」
女「ゼイゼイ……うわぁぁぁぁん」
「泣きながら、伏見稲荷を全力で駆け上っていった……」
女「ミッチーのばかぁ〜〜〜〜〜!!」
「上まで登って、謎の達成感あったなぁ」
「そしてこの後、どうしても食べたかったかき氷屋さんに行くんだけど、閉まっていて……」
「わかったぞ!それならおやすい御用だ!」
♪マメ〜〜ン
女「かき氷おいし……ふふふ」
「シャクシャクシャク……ほんとに美味いな、これ」
「うん。ありがとう。シャクシャクシャク……」
「冷たいかき氷食べたら、禊(みそぎ)をしたような感じで、気持ちが晴れてきました」
「これからは、ホントみたいなウソに惑わされずに、きちんと相手に向き合っていこうと思います。」
「よし、そのいきだ!」
「あ、おかわりお願いします〜!」
第6夜に続く。
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