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Interview 0031
独占インタビュー

ダンサーの想いを形にする。チャコット渡部聡子のバレエ衣装製作ポイントは、思いやり。

2018-03-28|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

バレエ衣装デザイナー、渡部聡子。現在、チャコット株式会社でバレエ衣装製作のすべての工程に携わっている。彼女とバレエの出会いは小学生のとき。友人の発表会を観に行ったことだった。舞台でスポットライトを浴びる友人に憧れ、踊りながら帰った彼女は、すぐにバレエ教室に通い始めた。数年後、ファッションに興味があったことから、高校卒業とともに服飾専門学校に入学。学校で見かけたバレエ衣装会社の求人に興味を持ち、すぐに連絡を入れた。それからは、とんとん拍子で入社が決まる。入社後はバレエ経験が見込まれ、新人のうちから1人で仕事を任されるなどメキメキと頭角を現す。その後、経験を生かしてフリーに転向。渡部とチャコットとの出会いは、その2年後である。

「当然ですが、フリーでの仕事は営業活動も自分でしないといけないんです。自分で自分をマネジメントすることが苦手だった私にとって、すべて自分で動かなければいけないというのが手に余ってしまって。衣装製作だけに集中したいな、そろそろどこかに所属して働こうかなと考えていました。そんなとき、たまたま前職の同僚が衣装製作の経験者を探していたんです。タイミング良く『一緒にチャコットで働かない?』と声を掛けていただき、チャコットへの入社を決意しました」

バレエの衣装製作には、役柄のイメージを壊してはいけないというルールがある。クラシックバレエでは、基本的な色や形が役によって決まっているのだ。そうなると、同じような衣装ができてしまうのは当然のこと。しかし、渡部はひとつひとつ違う衣装に見せるため、素材などで新しいものを取り入れているという。それだけでなく、依頼者であるお客さまがどのようなイメージを持っているか、どこを細く見せたいと思っているかもヒアリングして汲み取り、デザインする。そうしてこだわり抜いてつくった衣装を客席から見たときの感動はひとしおだ。

「舞台を観に行くと、お客さまから直接感謝の言葉をいただくことがあります。衣装が完成した瞬間や感謝の言葉をいただいたときは、やはり達成感とやりがいを感じますね。あと、同じ衣装なのに、普段見ているのと舞台上で照明にあたるのとでは全然違って見えるんです。自分が意図したように見えているのか、否か。『あの飾りは舞台では全然見えなかったなあ』とか、毎回勉強になりますね。なので、自分が衣装製作を担当した舞台はできる限り観にいきたいなと思っています」

チャコット株式会社は、韓国に”チャコットコリア”という関連会社を展開している。渡部は、このチャコットコリアで、韓国のバレエ団の衣装製作を担当した経験がある。これが結構難航した。

「日本人と韓国人では、採寸値が一緒でも体の形が違うんです。いつも作っているように作っても、なぜか韓国人の体にはフィットしない。それが結構大変でした。あとは、やはり好みも違うんですよね。気にするポイントが国によって全く異なりました。完成するまでは、衣装を韓国へ送ってダメだったら手直しして、また送って…というのを短期間で繰り返して。最後は、韓国までフィッティングしに行ったりもしましたね。『あぁもうどうしよう!間に合わない』と毎日冷や汗かきっぱなしで。製作時は常に手が震えていました(笑)。でもそのときは本番まで数日しかなかったので、とにかくやるしかないと自分を奮い立たせて。幸い、韓国で服飾の先生をやっている方が手伝ってくださったので、身振り手振りで指示を出していました。本番は客席から観させてもらって。まだ自分に自信が持てなかった時期だったこともあり、無事に幕が上がったのを見て涙が出そうになりました」

前職では新人のうちから活躍、フリーでの経験も積んだ。それなのに自信がなかったと語る渡部。では一体、いつどこで自信がついたのか。

「当時は自分が思っているものより、周りから期待されているものがすごく大きいように感じていて。期待に応えられるかな、私にできるかなと常に考えていたんです。特に20代30代は、自分の経験や自信より、周りから求められるものがどんどん大きくなってくる時期。それに心が追いつかなくて。でも、周囲の人が期待してくれるということは、それだけ自分が考えているよりもできると思ってくれているからで。期待に応えることももちろん大切なんですけど、それよりも周囲の気持ちを大切にして、自分にできるものを精一杯頑張ろうという風に思考を変えたんです。どんなに頑張ってもできないものはできないから。長年働いていて、自分の不得意な範囲はある程度把握していましたし、こういう時はこの人に助けてもらう、この人に相談したら良いかもというのがわかるようになっていましたしね」

昔は誰に何を言って助けてもらえば良いのかも分からなかった、と話す彼女もバレエ・レンタル事業課で係長として指揮をとり、今では相談を受ける側となった。自身の経験を踏まえて、メンバーの気持ちを軽くするよう接したり、どの人に相談したら良いかなどアドバイスをしているという。そんな彼女の今後の展望を聞いてみた。

「チャコットに衣装を依頼してくださるのは、バレエ教室やバレエ学校の生徒さん、大人から始めた生徒さんが中心。プロのバレエ団の衣装のオーダーはなかなかないんです。なので、今後はプロのダンサーに着ていただけるような衣装をつくりたいです。弊社は弊社主催の舞台でプロのダンサーに出演してもらうことがあるんですね。そういった機会に私の作った衣装を着ていただいて、いいなと思ってもらえる。そんな衣装をつくらないと、と思っています。チャンスを次の仕事に繋げていきたいです」

実は渡部、在職中に出産を経て、働くママとして育児と仕事を両立させている。子どもの成長に伴い、自身を取り巻く環境も変わっていく。「育児をしながら仕事をしているうちは”これがベスト”というものは見つからないと思う。でも、仕事と家庭のバランスを取りながらベストの状況を探し続けたい」と彼女は語る。小学生の頃から母となった今まで、バレエとは切っても切り離せない人生を送ってきた渡部。彼女の手がけたバレエ衣装は、これからも多くのダンサーたちに愛され、舞台で輝き続けるだろう。

プロフィール[Profile] 渡部聡子 [わたべさとこ]

1977年10月24日生まれ。生産部 バレエ・レンタル事業課 係長。服飾の専門学校を卒業後、バレエ衣装製作会社にてデザイナーとして活躍。その後、チャコット株式会社へ入社する。現在は、バレエ衣装のレンタルやオーダー衣装の製作に携わっている。

『AddElm SHOP』

【チャコット新宿店】
住所:東京都渋谷区代々木 2-11-17 ラウンドクロス新宿 2F
営業時間:11:00-19:30
定休日:年中無休(年末年始を除く)
TEL:03-5302-1991
チャコット公式サイト:http://www.chacott-jp.com/j/

体に起こる生理現象を活用し、多くの方のパフォーマンスを最大限に引き出すことを目指している「AddElm」と共同で商品を展開。2018年1月、第1弾として、チャコット新宿店内に『AddElm SHOP』をオープンした。今後は「もっと動けるカラダへ」をコンセプトに、最先端テクノロジーを駆使した新感覚素材「AddElm(アドエルム)」を使用した商品展開・イベント開催を行なう。「都会的なカジュアルスポーツコーディネート」がデザインテーマとなっており、サイズという概念をなくしたフリーフィットウェアを開発。他にもマット、ブランケット、ブレス、ネックレス、サンダルなど、今後も新商品を続々展開していく。

photographer:小野千明

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