寝てる間にこっそりLINEをのぞき見するのは犯罪?
スマホや携帯電話は今や欠かせないコミュニケーションツールであり、そこには人に見られたくないものも含め、多くの情報が詰まっています。
しかしそれだからこそ、恋人やパートナーの携帯電話を勝手にこっそり見てしまった、見られてしまった、という経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、勝手に人の携帯電話、特にメールやLINEでのやりとりを見る行為について、法律的にはどのような問題があるのか、解説したいと思います。
■信書開封罪?
まず、「信書開封罪」(刑法133条)という罪があるので、これに当たらないでしょうか。メールなどは手紙に代わるコミュニケーションツールといえることからすると、当たりそうな気もします。
しかし、この罪は「封をしてある」ことが要件となっており、電子的なやりとりにおいて「封」というのが観念できないので、勝手に開封してもこの罪にあたりません。
では、端末自体にパスワードなどでロックをかけている場合はどうなのでしょうか。
この場合も「信書に」に封をしてあるとは言えないですし、封をするというのは電磁的な方法を含まないので(含む場合には、原則としてその旨の規定が必要になります。)、やはりこの罪は成立しないことになります。
■不正アクセス禁止法?
しかし、端末を勝手に操作することは不正アクセスといえるようにも思えますが、この点はどうでしょうか。
不正アクセス禁止法が予定しているのは、他人のパスワードを用いて他人のサーバーに勝手にアクセスする行為ですが、この行為はインターネット回線を通じて行われるものに限られます。
そのため、端末を手に取って勝手に操作することは、不正アクセスとは言えません。したがって、不正アクセス禁止法に抵触するということもありません。
ただし、端末からインターネットを利用し、パスワードが必要なウェブサイトにアクセスし、他人のパスワードを入力して情報を見ることは、不正アクセスに当たりえます。
プライバシー侵害
このように犯罪にはなかなかなりにくいですが、勝手に見られたら不快なことは間違いないでしょう。そのため、プライバシー侵害を理由に損害賠償(慰謝料)を請求することは一応可能です。
ただし、個人的に見ただけであれば慰謝料は低額にとどまると思われ、勝手に見られたということはなかなか立証が難しいという問題があります。
このように、勝手に見ても法的責任を追及しにくいものではありますが、モラルに反する行動ですし、勝手に見ていることが知られれば信頼関係も崩れ、いいことはありませんから、そのようなことはするべきではないといえます。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)