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Interview 0028
独占インタビュー

『リアル脱出ゲーム』10周年。SCRAPきださおりの“心を動かす謎解き”のつくり方

2017-11-08|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

密室を探索し、部屋の中から出てくるわずかな道具や暗号などの手がかりをもとに出口を探す脱出ゲーム。ウェブのフラッシュコンテンツから始まったこのゲームはいまや画面を飛び出し、現実で体験ができる『リアル脱出ゲーム』として、男女問わずあらゆる世代に人気のエンターテインメントになっている。

そんな『リアル脱出ゲーム』の生みの親が株式会社SCRAPだ。もともと「SCRAP」とは、フリーペーパーの名前だった。コンセプトは毎回テーマを決めて特集を組み、それにちなんだイベントまで行なう一風変わったもの。その中でいち早く脱出ゲームの人気に着目し、実際に参加者が脱出を体験できるゲームイベントを企画した。それが『リアル脱出ゲーム』の始まりである。

現在、SCRAPの『リアル脱出ゲーム』は10周年を迎えている。これまで、企画、ディレクション、プロデュースなど、あらゆる制作現場に携わってきたのがコンテンツディレクター・きださおりだ。「忘れられた実験室からの脱出」や「片想いからの脱出」、「君は明日と消えていった」など謎解きの軸となり、参加者の心を惹きつけてやまないストーリーを手がけている彼女。12月にオープンする『東京ミステリーサーカス』という室内型テーマパークの総支配人も務めている。まさに『リアル脱出ゲーム』の顔ともいえる人物。そんな彼女に脱出の醍醐味である“謎解き”を初めてつくったときのことを聞いてみた。

「今でも色んな人から謎解きってどうやってつくってるんですかって聞かれるんですけど、逆に私が教えてほしかったくらいで。数学もパズルも得意じゃなかったので、つくり方はもちろん、思いつき方すらわからなかったです。でも、先にイベントの告知をしてしまっていたのでやるしかなくて(笑)。毎日、開催日が近づいてくるのに怯えていましたね」

お客さんがすでにチケット購入したイベントを頓挫させるわけにはいかない。本を読んでみたり、プロのパズル制作者に話を聞きに行ったり、彼女はなりふり構わず謎解きづくりに打ち込んだ。彼女が右も左もわからない中でも邁進できたのは、つくりたい作品のイメージがあったからだという。

「当時の脱出ゲームというと、淡々と爆弾解除や暗号解読をしていくような男性的なイメージで、謎解きも大人向けで難しいものが多かったんです。だから、ちょっとした驚きとか子どもも楽しめる謎解きもあって、ゲームが終わったあとに笑みがこぼれるようなハートウォーミングな物語を体験できるリアル脱出ゲームがつくりたくて。“こういうふうにしたい”っていう自分の理想があったので、そこから工夫してとにかく謎をつくってみましたね」

試行錯誤しながらつくった謎解きを友人や知人に解かせ、面白いかどうか質問してはまた試作品をつくる日々。友人に何度も謎解きを頼んで呆れられそうになったことや、万が一できあがらなかったときのことを思い浮かべ、もう何か別の方法で楽しませないとダメかもしれない、とまで追い詰められたこともあったという。そうした苦難の末、できあがったのが福岡で初演を迎えた2011年12月公演の「ある幽霊船からの脱出」だった。

「ゲーム終了後のアンケートで“お話が素敵でした”って感想を読んだとき、自分が思ったとおりの楽しみ方をお客さんが体験してくれたんだと実感できて、すごく嬉しくて励みになりました」

10周年を迎えた今でも、きだのモノづくりの原動力となるのは客の感想だ。インターネットを見るのが趣味と言う彼女。新しいものや話題をキャッチする自身のアンテナにもなっているという。さまざまな意見や情報が飛び交う場だからこそ、彼女のもとにはイベントに対するネガティブな意見も流れてくる。

「全国規模になると自然と自分の手から離れる部分が多くなってしまって、気づかないところで純度が低くなっていたり、予想外のことが起きてしまったりする場合もあるんです。だから、ちょっとでも気になることが書いてあったら、本人に直接質問しちゃうこともあります。いち早く改善策を練るきっかけにもなるので。一方ですごく熱量の高い反響があったときは、その地域の運営さんがもっと良くしようと頑張ってくれていたりして。ひとつの工夫でイベントの反響って変わってくるので、ありがたいです」

自分がつくったものに周りが共鳴し、より良いものに育っていく。そんなシナジーを生み出しながら、成長してきた『リアル脱出ゲーム』。その熱量は運営側だけでなくあらゆる世代の客も取り込み、過去公演のリバイバルだけではなく、アニメやゲームの有名作品とのコラボレーション、海外公演にまで広がっていった。SCRAPの人気公演の中でも根強いファンがついている作品のひとつが、きだの代表作ともいえる「君は明日と消えていった」(きみあす)だ。亡くなった幼なじみの願いを叶えるという、脱出ゲームとは思えないコンセプトの異色作がどうやって生まれたのか?きっかけをきだに聞いてみた。

「構想し始めたのが、ちょうど29歳から30歳になるぐらいの頃。仕事でもプライベートでもある程度経験を積み重ねてきた時期で。あのときこう言っておけば…とか、もう少し素直になっていれば…とか、言いたいことを逃してきた後悔も積み重ねてきたなってふと気づいたんですよね。それで、 “もう一個も後悔したくない”って思ったんです。友人に話してみたら共感してくれる子が割といて、これはもう同じことを思っている人がたくさんいるに違いない!と。私も含め、そういう人たちに“後悔しない道を選ぼうよ”っていう足を踏み出すきっかけになるような作品をつくりたかったんです」

実は「きみあす」の謎解きの難易度はなかなかに高い。参加者自身の言葉を求められたり、決断をせまられたりする場面もある。そこには、できるだけ非日常になりすぎないようにしたというきだのこだわりがあった。

「たとえば、現実で爆弾騒ぎがあったときに目の前のパズルを解くことなんてしないじゃないですか。だから『君は明日と消えていった』では、心にスッと謎を解く理由が入ってくるように恋愛や人間関係のいざこざとか、できるだけ日常生活に起こりうることの謎を散りばめたんです。謎解きで心を動かせるかどうかは、これからの脱出ゲームの課題でもあると思っています。ここに来ればタイムスリップしたように心が動かされて、終わったあともその人の中に経験として何か残るような、そんなゲームづくりを突き詰めていきたいですね」

誰しも後悔を持っている。だからこそ、未来に後悔しないために何ができるのか?大人になってからも、自分の糧となる選択と行動はできる。前を向いて考えるきっかけのひとつが自分のつくるイベントであるといいなと、きだはやさしい瞳で微笑んだ。これまでも、そしてこれからも、彼女はさまざまな人に眠っている感情を呼び起こすゲームをつくってくれるに違いない。

プロフィール[Profile] きださおり

1985年生まれ。東京ミステリーサーカス総支配人/コンテンツディレクター
京都の大学生時代にフリーペーパーSCRAPに参画。卒業後上京し、広告会社にてディレクターを務め、SCRAP東京オフィス設立のタイミングで再度合流。数々のリアル脱出ゲームを日本のみならず海外でも公演し、2014年に企画の実験室「道玄坂ヒミツキチラボ」の室長に就任。人気公演のプロデュース・ディレクションも手がけ、「忘れられた実験室からの脱出」「君は明日と消えていった」など、根強いファンを持つヒット作を生み出す。また、「片想いからの脱出」や「元カレ元カノフリーマーケット」など新しい恋愛系イベントも開拓中。12月オープンの“世界一謎がある”室内テーマパーク『東京ミステリーサーカス』の総支配人も務めている。

東京ミステリーサーカス

2017年12月、新宿・歌舞伎町にオープンする国内最大級の謎解きエンターテイメント施設。地下1階から地上4階の全5フロア構成で、過去人気だった「リアル脱出ゲーム」作品をリバイバルで体験できるだけでなく、新コンテンツも続々展開予定!12月までの期間限定で施設の壁面にSCRAPオリジナルの“謎”に満ちた巨大ミステリートリックアートを展示中。

◆施設名:TOKYO MYSTERY CIRCUS(東京ミステリーサーカス、略称:TMC)
◆所在地:東京都新宿区歌舞伎町1-27-5 APM ビル
◆交通手段:JR 新宿駅東口 徒歩 7 分 / 西武新宿駅 徒歩 2 分
◆オープン予定:2017 年12 月19 日(火)
◆公式Web:https://mysterycircus.jp
◆Twitter:@T_MysteryCircus

オープン1ヶ月前記念イベント

消えた!?『金のくまっキー像』を探せ!!

2017年11月10日(金)~13日(月)の4日間限定で、「東京ミステリーサーカス」のコンテンツをいち早く体験できるポップアップイベントが歌舞伎町シネシティ広場にて開催!

<STORY>
12月19日にオープンする「東京ミステリーサーカス」のオープニングセレモニーのために用意された特別ステージである大型トレーラーが歌舞伎町に突如出現!そこでお披露目されるはずだった「東京ミステリーサーカス」公式キャラクター『くまっキー』の金の立像。しかし、ベールオープンの瞬間、会場中は驚きの声で溢れかえった。金のくまっキー像がない!何者かに盗まれてしまったようだ!この事件を解決するのは特別に招かれた「見習い探偵」であるあなた。自らの足で歌舞伎町の街を捜査し、金のくまっキー像失踪の真実にたどり着け!

東京ミステリーサーカス公式キャラクター「くまっキー」

世界一謎があるテーマパーク「東京ミステリーサーカス」の団長。サーカスのクルーにとても慕われている頼れる存在。でも、ちょっとだけおっちょこちょいで、何かを隠すのが大好き。休日はもっぱら趣味の宝探しか、自家製鮭とばづくりにはげんでいる。

<開催日程>
◆11/10(金)
13:00スタート~17:00スタート(各回1時間/全5回)
◆11/11(土)~13(月)
11:00スタート~17:00スタート(各回1時間/全7回)

<参加方法>
◆参加費:無料(※お一人様1 回まで)
◆参加方法:開催期間中、会場受付にて整理券を配布
※整理券は各回スタートの1 時間前に配布開始。整理券配布の1 時間前から待機可能です
※混雑状況をかんがみて、ご希望の時間帯で体験いただけない場合がございます
※1名参加、複数名のグループ参加、どちらも可能です
※小学生以下は保護者同伴に限り参加できます
◆会場:歌舞伎町シネシティ広場(東京都新宿区歌舞伎町1-19)
◆アクセス:西武新宿線「西武新宿駅」南口より徒歩2分/東京メトロ丸ノ内線「新宿駅」B12出口より徒歩4分/都営大江戸線「新宿西口駅」D3出口より徒歩5分
◆後援: 新宿区
◆共催: 歌舞伎町タウン・マネージメント



photographer:榊原亮佑

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