受け身の姿勢から劇的変化!中小企業のための若手人材育成プログラム「スタメン!」に行ってみた

受け身の姿勢から劇的変化!中小企業のための若手人材育成プログラム「スタメン!」に行ってみた

就職Shopの様子

前回お伝えした、リクルートキャリアが手がける若者向け就職活動支援サービス「就職Shop」。ここでは、就業後も中小企業とその就労者である若者をサポートするオリジナル研修プログラム「スタメン!」を開催しています。この研修では社会人としての仕事の基本姿勢を学べるほか、PDCAサイクルやプレゼンといった“ビジネスの体幹”を徹底的に強化。会社規模や組織体制的にどうしてもOJTに余力を割けない中小企業のフォローアップにもなっています。

筆者が参加したのは3日間のうちの2日目。業務推進力(仕事の意義、PDCAサイクル、優先順位)と協働力(他人のサポート、組織の目的、ホウレンソウ)を鍛える「スキル学習プログラム」と、新人として成長するためのスタンスについて解説した「スタンス学習プログラム」の講義が行なわれていました。

チームでタワー模型をつくる

テーブルごとのチームで協力し、20分間でカラフルなストローを使ってタワー模型をつくるワークです。使って良いのは紙とハサミとセロハンテープで、完成条件は自立すること(セロハンテープでテーブルに固定するのはNG)。どんなタワーをつくるのか、メンバーでイメージを話し合っていきます。

就職Shopの様子

どんなタワーにしようか悩む受講者たち。メンバーが会社横断で集められたということもあり、所属も業種も職種もバラバラ。イメージを決めるにも、お互い譲りあっていては話が進みません。かといって強引に進めていくわけにもいかず…コミュニケーションはもちろん、話を推進していく工夫や調整能力も必要になってくるでしょう。みんな真剣に話し合いながらイメージを固めていきます。

就職Shopの様子

このワークの面白い点は、ミッションが同じタワー模型作成でも、チームごとにまったく異なるデザインのものができあがってくること。機能やデザイン、完成条件など、どの要件に重点を置いてつくっていくかによって結果が違ってくるので、シンプルながらも仕事のPDCA要点を押さえているワークだと感じました(自分もやってみたくなる!)。

就職Shopの様子

実は制限時間20分を過ぎても各チームともにタワーができあがっていませんでした…(笑)講師の方が見かねて時間を延長してくれる中、急いで作業を進めていきます。

就職Shopの様子

こちらのチームはタコをイメージしたタワーに。完成したら、各チームでタワー模型のプレゼンを行ない、他チームからの質疑応答に答えていきます。

就職Shopの様子

こちらのチームは完成条件の自立することに重点を置き、土台が安定する四角形のタワーを制作。土台、カラー、用途など各コンセプトを代表者がプレゼンしていきます。プレゼン終了後、他チームから質問が出るかと思いきや、なかなか出ず…講師が「タワー名」や「用途の詳細」などを質問していました。提案に対するリスクヘッジや課題抽出は、仕事の現場でも重要なファクターで質問力が問われます。

各チームによるプレゼンと質疑応答の終了後、講師が受講者それぞれにタワー模型作成で苦労した点をヒアリング。「思ったより時間がかかる」「計画や作業が明確になっていなかった」「イメージの共有が甘かった」などワークの振り返りから、PDCAサイクルの説明とワークにおける各プロセスの解説を行なっていきました。

就職Shopの様子

今回のワークでいえば、「P:タワーをつくる」「D:制作作業」「C:プレゼンと質疑応答」「A:ワークの振り返りによる気づき」が一連のサイクル。ワークを通してPDCAサイクルを疑似体験することで、自分の仕事に対する行動を振り返るきっかけにもなっているようです。実際、筆者も講義を聴きながらこれまで社会人生活が走馬燈のように頭をよぎって、今の自分がちゃんと仕事できているのか一抹の不安を抱えました(できることなら最初から講義を受けたい!)

他にも、上司や同僚と協働してPDCAサイクルをまわすコツや仕事への意義、それにともなったホウレンソウへの考え方など、社会人としてつまずきがちなこと、きちんと仕事をするためのポイントも解説。上司は怖い・頼っちゃいけない人ではなく、相談して良い・相談すべき人であることや、もし失敗したとしても、そこから改善点を振り返ることの大切さといった新人のときに誰もが抱いてしまう“恐れ”への向き合い方にもフォーカス。若手人材育成に特化したプログラムだからこそ、丁寧に基本スタンスを学ぶことができる内容です。

ちなみに講師は就職Shop「スタメン!」首都圏担当の阿部 将太さん。阿部さんも大学卒業後に教員を目指しましたが断念し、営業としてキャリアをスタート。その後、リクルート(現:リクルートキャリア)に入社し、就職Shopのリクルーティングアドバイザーやキャリアコーディネーターを務め、2017年から「スタメン!」講師を兼務。その経歴から、講義では大学卒業後の挫折、仕事への葛藤、「スタメン!」講師抜擢の際の心境などをリアルかつ赤裸々に語ってくれます。同じような苦労を経験してきたからこそできる、貴重な講義も満載でした。

最後に「就職Shop」について若者に聞いてみた

インタビューに答えてくれたのは、今回の「スタメン!」に参加していたMさん(24歳)。就職Shopに来社したきっかけから、苦手だった面接をどう乗り越えて就職したのかまで話してくれました。

──就職Shopを利用したきっかけは?
「もともと在宅でイラストの仕事を請け負っていたのですが、とても生活できる金額ではありませんでした。どこかへきちんと出勤して働いて…といった社会人経験も乏しかったため、ほぼニートのような状態に不安を抱き、未経験の若い人たちの就職に強いエージェントをネットで検索。就職Shopにたどり着きました。恥ずかしいんですが…初日に半泣きになりながら、自分のポートフォリオを持参してイラスト系のクリエイティブな仕事がないか相談したんです。就職Shopでは取り扱いが少ない職種にも関わらず、探してきてくれて。今は2Dデザイナーとしてその会社で働いています」

──苦手だった面接をどう乗り越えましたか?
「もともと学生時代から人前で話すことが苦手で、周りがシーンと静かになると余計にソワソワしてしまうほど。話の組み立てができず、広げることもままならない…とにかく自信がありませんでした。面接練習でも事前に言いたいことをまとめたにも関わらず、いざ練習でアドリブが入るとどもってしまう…。でも、担当キャリアコーディネーターさんがとても明るい方で、怖じ気づいてしまう私をグイグイ引っ張っていてくれて。言い回しもこっちのほうが良いよって、ネガティブになりやすかった私の心に寄り添いながら懸命にアドバイスをくれたんです。また、履歴書や職務経歴書がよく書けていると褒めてもらったり、自分がやってきた事前準備もバックアップしてもらったことで、少しずつ乗り越えていくことができました」

笑顔で話す男性

──「スタメン!」を受けてみた感想は?
「初日はやっぱり遠慮がちに参加していました(笑)でも、2日目になると、するべきこととやり方が何となくわかってきて、私だけでなくみんなも動き方や意見の出し方が変わってきたと思います。言うべきところは言うし、意見に対して良くないと思ったら否定ではなく、こっちのほうが良いんじゃないかと提案してみたり。別のチームからもそういう声が聞こえてくるので、刺激をもらっています。私の職場がちょうど繁忙期で先輩に質問しづらくて、ホウレンソウをどうしたらいいんだろうって悩んでいたんですが、この研修で自分のするべきことの整理って大切なんだなって学びました」

──今後、どんなビジネスパーソンになりたいですか?
「将来はイラスト制作の進行や品質管理も含めて業務統括をしていきたいと思っています。今回のワークでも周りの様子を見たり、判断することが得意なんじゃないかなって自分の中に気づきがあって。チームやメンバーの状態を把握しながら、自分の作業も進めていけるよう仕事に取り組んでいきたいです」

◆担当キャリアコーディネーター:就職Shopしんじゅく 佐川亜矢子さんより
「少し不安そうな表情で大きなデッサン帳を手にご来社されたMさん。ポートフォリオには素敵な絵が詰まっており、これまでの経験で自分なりに技術力をつけてきたことがわかりました。しかし、クリエイティブな求人となると実務経験を求められることが多く、弊社では出現率も低いため、お手伝いが難しいかもしれない…一瞬そんな心配が頭をよぎりましたが、とにかく彼女の創造性やスキルを活かせる求人を探しました。見つかったときは、“Mさん!奇跡の求人がありました!”とお互いに大喜びで、その場で応募を決めたことを覚えています」

ノート

「面談練習では、回数を重ねていく中でMさんが不安から涙を流す場面もありました。とにかく少しでも自己肯定感を高められるよう、彼女がやってきたことや強みだと感じることをひとつひとつ共有して励ましの姿勢で臨みました。そのうちに緊張しつつも経歴と意欲をしっかり伝えられるようになり、面接ではセンスも企業ニーズにマッチしたようで無事に内定を獲得。彼女は落ち込みやすいけれど、夢に向かって着実に地道に努力を続けられ、自分でやれることを考えて自走できるのが素晴らしいところです。お客様の要望に応えることは大変ですが、自分の強みを発揮できる仕事に就けるのはとても幸せなこと。何にでも意味があると信じて頑張ってくださいね。Mさんの作品、楽しみにしています」

【まとめ】

筆者も独学でWebを学び、IT業界に飛び込んだものの学歴もなければ経験もなく、20代前半は特に苦労した記憶があります。当時は新卒のレールから外れた人材の価値を見出してくれるようなサービスは乏しく、書類で弾き返されることがほとんど。雇用してもらったとしても、アルバイトや業務委託、非正規雇用で給与が低かったり、中には福利厚生が受けられなかったこともあります。取材をしていくうちに「もっと自分が若ければ絶対利用したかった!」とうらやましくなるサービスや話ばかりで、「スタメン!」も中堅社員が受けても良いんじゃないかと思える内容でした。IT、メーカー、不動産など参加企業の業種は多岐に渡り、職種も営業職、事務、エンジニアなど多種多様。同年代の異業種交流会のような感じで刺激をもらえそうな環境だとも感じました。

社会は自分が学生時代に考えていた以上に厳しく、学校で教わらないことが当たり前のようにゴロゴロあります。飛び込んだとて、その荒波を誰しもが泳ぎきることは難しいでしょう。そんな社会で人手不足が課題として上がってきている今こそ、ちゃんとスタートラインに立てるよう支援するサービスが必要なのではないでしょうか。

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