リクナビNEXT主催の『GOOD ACTION』アワード。前回に続き、第5回目となる表彰式の取材レポート後編をお届けします。
役職・階層・部署を取っ払い、情報格差もなくしたバリフラットモデル/株式会社ISAO
大手ゲーム会社であるセガ(現株式会社セガホールディングス)とCSK(現SCSK株式会社)のグループ企業として1999年10月、創業した『株式会社ISAO』。ITサービスの企画・開発を手がける同社は、かつて62ヶ月連続経営赤字という業績悪化にありました。そこで2011年より代表取締役・中村佳志さんのもと組織改革を実施。情報自体が権力の源泉となると考え、事業数値から給与・等級も含めた人事に関する全情報を徹底的に社内にてオープン化。情報格差をなくし、2015年に管理職と階層を必要としない組織「バリフラットモデル」を策定・導入しました。
こうして誰もが自社の現状を把握できるようになったことで、社内の風通しも向上。社員が会社へアイデアをあげやすくなり、若手社員から新規事業が生まれたケースも。また、「オープン化」するだけでなく、権力を奪われた役職層が今までのやり方に戻らないよう「トップからコミットメント」し、ついていけない社員を生み出さないよう社員間ではファミリー的な「絆」を大事にすることでバリフラット化を推進してきました。
ここまでフラット化している中で、気になるのがマネジメント体制。ISAOでは社員がお互いにコーチを指名し、フォローしあう選任コーチ制を導入しています。それぞれの社員がキャリアの相談相手として「コーチ」1名を指名。このコーチを含む最大7名を自身の評価役として起用することができます。社員1名を平均4~5名でケアし、コーチは何かあればすぐに変更可能。実際に年齢問わずフラットな指名が行なわれているそうです。組織構築や内部統制に消費されてしまうマンパワーを開放し、ひとりひとりがプレーヤーとして主人公になる組織を実現しています。
全員が子育て中の時短社員!能率&定着率UPの業務改善とジョブシェア/株式会社ルバート
ママ向けのイベントやマーケティング、女性活躍を推進する企画・運営を行なっている『株式会社ルバート』。同社の始まりは代表取締役の谷平優美さんが始めた子育て中のママが集まるコミュニティでした。もともと谷平さんは、28歳まで転職・キャリア支援業界で働いてきたキャリアウーマン。その後、出産を経てフリーランスで自分にあった働き方を模索していくうちに、さまざまな壁にぶつかります。待機児童問題で入園できず、不認可保育による高額出費の中、子育てと仕事の両立に追われた結果、収入は不安定…。“子育てしながら働くのは割りに合わない”と多くの女性が諦めてしまってもおかしくない状況に谷平さんは違和感を覚え、情報交換の場としてコミュニティを創設。そこから社会にきちんと情報発信をすべく法人化を決意し、ルバートの前身である「ママハピ」が誕生しました。
設立当初はオフィスもなく、社員はすべて在宅勤務でしたが、できるだけ高い給与を提示して優秀な人材を雇用。しかし、作業が属人化しやすくなり、他社員に相談しづらいストレスやタスクオーバーなどで従業員がなかなか定着しませんでした。人が辞めるたびに会社が存続の危機にさらされる…その繰り返しから脱却すべく、今までのやり方を根本から徹底的に見直し、経営方針を転換。現在は基本的にオフィスに出社してもらい、申請すれば在宅勤務可という体制に変え、求人も収入より時間を優先して柔軟に働きたい人たちを積極的に採用するようにしました。
また、業務の可視化を行ない、無駄なタスクはできるだけ廃止。情報はすべてひとつのサーバー内資料で管理し、社内の報連相はチャットワークを活用することでジョブシェアを実施。時短勤務でも、急な休みをとっても社員全員がお互いに助け合い、スムーズに業務の遂行ができるようになりました。“やりがい”と“フレキシビリティ”のバランスがとれた環境をつくりあげています。
【Cheer Up賞】新しいスキルを求めるエンジニアのキャリアアップ支援で離職率100%へ/株式会社MapleSystems
今回からの新設賞である「Cheer Up賞」を受賞したのは、SESを中心としたシステム開発会社『株式会社MapleSystems』。同社の社長は現役エンジニア。エンジニアが何を求めて企業に所属するのかを考えた結果、行きついたのが「離職率100%」を目指すことでした。
エンジニアは自分が携わることのできる技術によって会社や働き方を決めるため、2~3年で離職してしまうのは自然な流れだと同社は考え、逆張りの方針を展開。やりたいことをやったら卒業しても良い、けれど入社するのであれば成長意欲100%で来てほしい…その考えのもと、エンジニアのキャリアアップ支援を実施。定期的にエンジニアを集めたイベントや勉強会、キャリア相談などを行ない、エンジニアのキャリアについて悩みをきちんと打ち明けられる場を設けています。
その結果、入社希望者が増え、エンジニア同士の繋がりからリファラル採用も拡大。エンジニアが大事にしている人脈に紹介してもらえる会社に成長したことで、ますます注目したいポテンシャルのある施策としてCheer Up賞受賞となりました。
【まとめ】
政府が推進していることもあり、注目されている「働き方改革」。さらに2019年4月には改正労基法の施行が待ち構えています。しかし、この表彰式で感じたのは、表彰されたどの会社も世間体や形式だけの働き方改革に振り回されず、根本から自社の環境を変えるために職場づくりに取り組んだということ。職場づくりとは制度や規定を「つくる」だけではなく、経営状況にあわせて思い切って「見直す」、世間体や社会情勢を切り離して「壊す」ことも大切だと考えさせられました。また、物ごとの流れを汲み取って、逆張りの発想も取り入れることで、新しい働き方が発見できるのかもしれません。
■第5回GOOD ACTIONアワード審査員
若新 雄純(わかしん ゆうじゅん)
慶應義塾大学特任准教授/株式会社NewYouth代表取締役
守島 基博(もりしま もとひろ)
学習院大学経済学部経営学科教授
アキレス 美知子(あきれす みちこ)
SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント
横浜市政策局男女共同参画推進担当参与
NPO法人GEWELアドバイザリーボードチェア
藤井 薫(ふじい かおる)
株式会社リクルートキャリア リクナビNEXT編集長
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