毎回、さまざまな企業の職場を盛り上げる取り組みを取り上げ、表彰するリクルートキャリア主催の『GOOD ACTION』。第4回目となる今回は初の2部構成。表彰式後、受賞取り組み担当者と一般参加者によるワークショップが行なわれました。
審査員である若新雄純氏の進行のもと、開催されたのはディベート大会。今回の『GOOD ACTION』の想いでもある「働くあなたが主人公」というコンセプトを深めるべく、労働に関するテーマを用意。肯定側と否定側に分かれて議論し、考察を深めていきます。気になるテーマは「社員は会社の飼い犬であるべきだ」というもの。会社に勤める者としては口をついてでも出したくない、複雑な気持ちになるテーマですね…!
■進行
若新 雄純(わかしん ゆうじゅん)氏
慶應義塾大学特任准教授/株式会社NewYouth代表取締役
ディベートチームは8グループ。受賞取り組み担当者・一般参加者関係なくランダムに選ばれ、業種、働き方もバラバラのメンバーが集まってテーマについて話し合います。今回のディベートでは本場の海外方式にならって、ディベート開始まで自分のチームが肯定と否定のどちらになるのかわからないルール。そもそもディベートの意義は、個人的な意見は抜きにして肯定・否定という極端な立場からテーマについて考察を深めていくことだからだそうです。若新氏いわく、テレビなどでやっている討論もこうした重要なポイントが抜けているものが多いとのこと。(たけしのTVタックルとか極端な議論が多くて面白いと思っていましたが、違ったんですね・笑)
チームに分かれたら、あらかじめ設けられた準備時間に肯定と否定の両意見をチーム内で出してまとめていきます。それからクジ引きで肯定側と否定側を決め、チーム対抗戦でディベートを開始。その後、チームから代表メンバー1名を選抜し、ステージにて代表ディベートを行ないます。さらにワークショップ中は、交わされた意見をリアルタイムでイラストとともにホワイトボードにまとめる『グラフィックレコーディング』と、参加者全員が感想を即時に書き込める匿名掲示板を用意。会場とリンクしたネット上でも、さまざまな意見が飛び交いました。
3分という短い準備時間の中で、チームメンバーそれぞれが飼い犬である場合と飼い犬でなかった場合のメリット・デメリットなどを書いてまとめていきます。やはり「飼い犬」という言葉の印象からか、「飼い犬」になることについて多かった意見は会社という庭に繋がれて自由度が低い、触れられる世界が狭くなるかもしれないけれど安心・安全に働ける、責任は会社がとってくれるといった意見が目立っていました。
チームテーブルを見学していく中でも、印象的だった意見が「飼い犬」の対義語として出てきた「野良犬」「飼い猫」というもの。「野良犬」は名前のとおり会社という庭に繋がれていない存在で、イキイキと働ける生命力があるけれど、リスクを自分で背負っていかなければならないし、病気なども考えると短命では?という意見でした。一方で「飼い猫」は「飼い犬」と「野良犬」の中間のような、飼われている場所があっても気ままに動ける、制限さえも気にしない自由な存在。フレックス制や自宅勤務などさまざまな働き方が認められている現代ならではの存在が「飼い猫」なのかもしれません。
準備時間終了後、クジ引きで決められた肯定側チームと否定側チームでディベート。写真のディベートグループでは、Yahoo!アナウンス部の高橋さんとその部下の女性が熱い議論を交わしていました。
テーブルでのディベート後、最後に各チームから選抜メンバー1名がステージに登壇し、代表ディベートを開催。しかし、代表が揃ったところで肯定側と否定側の入れ替えが…!さすがに焦る選抜メンバー。急遽設けられた短い準備時間の中で、急いで意見をまとめます。
代表ディベートは、「肯定側の主張」→「否定側からの質問」→「否定側の主張」→「肯定側からの質問」という流れで進行。順番に飛び交った意見のダイジェストをお送りします。
※注)ディベートのため無作為に立場を分けたものであり、個人の意見ではありません
■肯定側の主張「飼い犬であるべきだ」
・働いていて個人で背負いきれないトラブルがあっても会社が責任を負ってくれる
・労働時間の上限や福利厚生などがあり、安心・安全に働ける
・そもそもここにいる全員が会社に飼われている飼い犬
・新卒にとっては、研修などで社会人としてのマナーが身につくため、野放しにされるよりも良い
■否定側から肯定側への質問・意見
Q:会社が責任をとってくれると言ったが、5年後、10年後でも同じことが言えるの?
A:社員全員の保護をするという観点で経営をしているのが会社というもの
Q:少し過激な意見になるが、築地移転の件はトップダウンで進めていった結果どうだったか?
A:トップダウンで進めていったところに悪い点はあったかもしれないが、飼い主と飼い犬という会社システムが悪いわけではない
・社員とは役割が違うだけで、経営者も飼い犬の一種だと思う
・会社に責任をとってもらえるという意識は成長や利益追求の意思を弱めてしまうのでは?
■否定側の主張「飼い犬であるべきではない」
・「飼い犬」とは、時間、場所、役割、仕事内容…どれも制限されている状態。「飼い犬」は前時代的な働き方。時代は変わっており、個人の主張が力を持って多様化が求められるようになってきた
・そうした時代のサービスやプロダクトを生み出すには個性が発揮される必要があり、会社もそういう場として変わっていかなければならない。色々なアイデアを生み出すために縛られる働き方はやめたほうが良い
・日本の人口を考えると就職者数は絶対的に減っていくため、「飼い犬」制度は画一的なものだと思う
■肯定側から否定側への質問・意見
Q:ヤフーではリモートワークもできるし、「飼い犬」であっても働き方を縛られているわけではないと思うが?
A:そういう多様な働き方は、「飼い犬」という生き方を変えていく上での良い結果だと思う
Q:前時代的だと言っていたが、今は100円ショップなど大量生産が進んでいる時代。大量生産をするためには、労働者を縛っていかないと統率がとれないと思うが?
A:そもそも100円ショップで考えると、ものづくり側に立つのは日本の労働ビジネスでは難しい。企画側に立つのでは?また、100円ショップは画一的なものの象徴ではなく、好みが多様化して生まれたもの
・ずっと否定側の話を聞いていて、これは新しい飼い方の提案だと感じた
・「飼い犬」=「縛られている」というイメージが強いが、「飼われる」=「縛られている」わけではない
面白かったのは肯定側・否定側のどちらも、意見を交わしていくうちに働き方の定義についての議論になっていたということ。この働き方は「飼い犬」なのか?それとも「飼い犬」ではないのか?“多様化”が進んでいる時代といっても、労働者ひとりひとりの意識の中にはまだしっかりと“多様化がどんなものなのか?”が根付いておらず、曖昧なのかもしれません。
最後の1分まで白熱した議論が続いた代表ディベート。交わされる意見をもとに、ステージ下のホワイトボードで同時進行されていたのは、グラフィックレコーディング。
出てきた意見をわかりやすく、可愛いイラストを交えてまとめていました。
【まとめ】
ここまで2時間にわたって行なわれてきたディベート大会。「社員は会社の飼い犬であるべきだ」というテーマへの決定的な結論は出さないまま、幕を閉じました。「飼い犬」とはどんなものなのか?本当に自由がないのか?それとも「飼い犬」として働いていたほうがラクなのか?女子ツク!読者のみなさんは、どう感じたでしょうか。
第4回GOOD ACTION 公式ページ
★第4回GOOD ACTION WEBページ
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