先日の大手広告代理店で起きた悲しい新入社員の過労自殺以来、ニュースサイトやキュレーションメディアを賑わせている「ブラック企業に気をつけよう」とか「残業地獄から逃げ出そう」系のコラム。一方、そんな記事の隣には「超一流の人は腕を磨き続けなければならない」や「がむしゃらに働いた先にある成功譚」などの意識高い系ハウツーが。まるで正反対の主張ですが、どっちを読んでもどっちも間違ってなさそう。果たして『女子ツク!』読者はどっちを信じれば幸せになれるのでしょうか…。
世論をバックに主流になりつつある「ゆるキャリ」の主張
いまネット上で圧倒的な力を持っているのがこちらの思想。もともと過労死問題やブラック企業に対する世間の関心が高まっていたところに、相次ぐ企業の不祥事が。これらを背景に「ゆるキャリ礼賛」記事が雨後の竹の子のごとく増えています。その論調は労働者の味方といわんばかりに働く人にやさしいものばかり。いわく「ムリはしないように」「つらくなったらすぐSOS」「正社員だけがゴールじゃない」「ガマンしないですぐ転職を」「なんなら嘘ついてでもサボっちゃえ」などなど。耳にもやさしく、ここちよく。読んでいるだけで癒やされそうですよね。
ただ、それらのメッセージを全て鵜呑みにするのはいかがなものか、と思います。確かに仕事のやりすぎで死んではいけません。24時間タタカエマスカ、というのもいまの時代にはアンマッチな気がします。しかし、だからといって過保護のママみたいに「なんでもかんでもオールオッケー」というのはちょっと無責任じゃないって思いませんか?ひとつの意見としてはアリだけど、ムリしなくて済む職場ばかりでもないでしょうし、がんばることまで全否定するのはどうなんでしょ。これだけあちこちでみんなが一斉にゆったりのんびりマイペースをよしとするのを見ていると、ちょっと心がザワザワしたりして。
いまどき根性論?でも正論は強い?「バリキャリ」ソウル
力強い「ゆるキャリ」の勢力に押されつつありますが、いまだにビジネス社会に根強く残っているのが根性論、精神論を中心とした「ハードワーク礼賛」思想。古くは経営の神様、松下幸之助さんから京セラ会長の稲盛和夫さん、最近ではユニクロの柳井さんや楽天の三木谷さんなどいわゆる「経団連系」のおじさま達が源流ですね。その亜流ともいえるフォロワーが、あまり聞いたこともない会社のトップだったりキャリアコンサルだったり。その論調たるや有名な電通の鬼十則を彷彿とさせる「仕事は人生そのもの」的な、触れるとヤケドしそうなヒリヒリするものばかり。若いうちの苦労は買ってでもせよ、とにかく無心にがむしゃらにやれ、たゆまぬ努力に努力を重ねて爪に火が灯るような厳しい働き方を是とします。例の広告代理店の過労自殺に触れて残業時間100時間程度で情けない、などと発言し炎上した大学教授もこの一派でしょう。
いくらなんでも時代錯誤では?と思っちゃうような、どう考えても低成長時代には不釣り合いな意見が多いように思えます。でもよくよく読むと、決して悪いこと言っているわけじゃないのですね。さすがに厳しいビジネス社会で成功を収めた人たちだけに、その内容にはいくつかの示唆に富んだ要素が含まれています。一生懸命仕事に取り組む事自体は素晴らしいことですので、バリキャリ志向のがんばりやさんにとっては刺さる記事もたくさんあるかと思います。
まとめ
結局のところ、バランスが大事なのかも。バリキャリウーマンは意識高い系の記事を中心に閲覧しながらも、時にはゆるキャリ記事でネジをゆるめてみる。ゆるキャリちゃんは普段こそゆるふわ記事で楽しく暮らしますがフトしたときにキャリアアップ系の記事を見て、気を引き締めてみる。バリだけ、ゆるだけじゃなくて、コンディションにあわせて使い分けられると、視野も広がりラクに生活できると思います。『女子ツク!』はこれからもバリキャリ、ゆるキャリ、どちらのワーキングウーマンも応援します。