長時間残業による過労死、残業代未払いなど、残業に関するネガティブな問題は後を絶ちません。一方で残業代があるからいまのお給料でもやっていける、余裕があるという人も多いのではないでしょうか。ただ、やはり残業代は会社にとってはコストでしかなく、どうにかして削減したいのがホンネ。そこで最近は「みなし残業制度」を導入する会社が増えてきました。でもこの「みなし残業」って聞きなれませんよね。“みなし”って何なの?普通の残業と何が違うの?…知らずにいたら、いつの間にか鬼のようなサビ残(サービス残業)で損してるかも?
(1)「みなし残業」って?
残業の有無にかかわらず、お給料や手当ての中にあらかじめ一定時間分の残業代が含まれている制度です。「固定残業代」とも言います。たとえば、月給が22万円で月40時間分の固定残業代を含んでいたとしたら、月の残業時間が40時間以内の場合は月給22万円のまま。残業代はつきません。40時間を超えた場合のみ、超過分の残業手当がもらえます。え?それって損してない?って思うかもしれませんが、毎日定時で帰っても、月10時間以内しか残業しなくても、残業代がもらえるんです。とはいえ、基本給を計算してみたら異常に低かった、トータルの労働時間で支給額を割ると最低賃金(※東京は現時点で907円)を下回っていた…なんてケースもあるようなので、手放しで喜べる制度ではないようです。
(2)どんなときに「みなし残業」になるの?
「みなし残業」になるケースはふたつあります。ひとつは「みなし労働時間制」に「固定残業代」が含まれるケース。「みなし労働時間制」とは実際の働いた時間に関わらず、一定の時間を働いたもの(労働時間)とみなして賃金を支払う制度。この労働時間の中に会社と労働者の合意のもと、残業時間も含めるよっていうことです。
※ただし「みなし労働時間制」が認められる職は何でもいいってわけではありません。外回り営業のように何時間働いたのか正確に把握できない、もしくは時期によって業務量が変わって働く時間も変則的で、1日の決まった労働時間で賃金を決めるのは難しい職ならOK。近年増えてきたコンサルティングやデザイナー、システムエンジニアなどが当てはまります。
もうひとつのケースは「定額残業制に基づくみなし残業」というもの。これは、基本給や年俸の中に一定の残業代が含まれているとみなす制度。詳細は(1)で説明した通りですが、こちらは業種制限がなく、すべての職に当てはまる可能性があります。
(3)求人広告にはどう記載されているの?
給与欄や福利厚生欄などの残業手当について書かれるところを確認しましょう。
- 記述例:
- ・月給22万円~25万円 ※月40時間分のみなし残業手当含む
- ・時間外手当(40時間を超えた場合に支給)
- ・残業手当(みなし残業40時間有り)
時間や金額などの内訳を明記していないものは要注意。というのも、「青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)」が改正され、みなし残業を導入している会社は募集・採用にあたって固定残業代の時間や金額の計算方法などの内訳を明確に書くことが2015年10月1日から義務化されたからです。全国求人情報協会からもお願いが出ています。
また、みなし残業時間の上限は月45時間。会社側が三六(サブロク)協定という従業員との協定を結べば、残業として許される範囲です(例外で条件を満たせば延長もあり)。あまりにも多い時間をみなし残業としている場合は、会社側に確認するようにしましょう。
まとめ
営業職や専門職に多い「みなし残業」。この制度で会社側に残業管理の主導権を握られ、サービス残業をさせられていたり、超過分の支払いがなかったり…というトラブルもあるようです。トラブルに巻き込まれないためにも、自分の毎日の労働時間や成果はしっかり把握しておきましょう。