女子ツク!people [女優:前田敦子]記事一覧
Interview 005
独占インタビュー

全部なくなって見えた、女優としての前田敦子

2016-06-10|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

2012年8月、約7年間在籍していたAKB48を卒業後、翌年に公開された映画『クロユリ団地』を皮切りに、女優活動を本格始動した前田敦子。その後もドラマ、映画、舞台と、数々の作品に出演、瞬く間にその頭角をあらわす。グループ脱退後に失速するパターンも珍しくないなか、着々と女優への礎を築く彼女の道筋もまた、決してなだらかなものではなかった。最新出演作の話を交えながら、その活動を追う。


今年4月からスタートしたTBSドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』に出演、濃厚なラブシーンにも挑んでいる。同時に6月11日からスタートする『連続ドラマW グーグーだって猫である2-good good the fortune cat-』では漫画家のたまごを演じている。ニット帽にカーキのジャケットを羽織った彼女はなんだか新鮮だ。


「“飯田”っていう少し変わった女の子の役なんです。漫画家っていってもアシスタントなので絵を描くシーンはほとんどなくて、黒くベタ塗りとか、スクリーントーンをカットしたりとか。でもだいぶ上手になってきて『私漫画家いけるかも!?』って喜んでたら『今もう全部パソコンなんで、その技術必要ないです』って。ちょっと残念(笑)」


タイトルどおり猫が登場する本作、前田敦子演じる“飯田”は猫が苦手という設定だが、実際の彼女は自身でも3匹の猫を飼うほどの愛猫家。それだけに今作への出演は喜びを隠せないよう。


「『グーグーだって~』は前作から大ファンだったので、オファーが来たときは飛び上がるほど嬉しかったです。ちょっとメルヘンで、でも人と猫の距離感はすごくリアルで、そんなところが大好きで。だから『あ、猫きらいって設定にしたから』って監督に言われたときは思わず『えー!!!』って聞き返しちゃった(笑)」


「見どころは?」と聞くと、「猫と宮沢さんと吉祥寺」と答える彼女。主演の宮沢りえとは2回目の共演になる。


「りえさんはわたしの憧れなんです。以前共演させてもらった時に、舞台の魅力を教えていただいて。それ以降、りえさんの舞台は全部観に行ってるんですが、演じる役によって180度雰囲気が変わる。今回のドラマではかわいらしい感じだけど、次に会う時はきっとまた違うりえさん。でもどんなりえさんも、ずーっと見ていたくなる、そんな女性です」

AKB48から抜けてひとり女優への道を歩み続けてきた。ドラマ、舞台、映画、小さな役も、主演も、演じる時の心がけとして「どんな役でも、自分をまっさらにして挑むようにしているんです。」と語る。それには黒沢清監督と出会った作品の出来事が影響している。


「4thシングルのミュージックビデオから派生した映像作品『Seventh Code』で、黒沢監督と初めてのお仕事。右も左もわからなくて『こうかな?、いやこうかな?』って色々と試行錯誤する私に、黒沢監督は『それは必要ないからやめてください』、『その癖もいらないです』って繰り返されて。怒るわけじゃなくて、むしろ優しく。期待に応えられない自分が情けなくて、撮影が終わると毎日泣きながら帰っていました」


自分を求めて起用してくれた監督に、なにが返せるのだろうか?答えは出ないまま、ただがむしゃらにがんばり、悔し泣きをする日々が続いた。その答えは撮影終了後に出た。


「監督が完成した作品を映画祭に持っていくと言ってくださって、その映像にうつる自分を観たときにやっとわかった気がしたんです。演じる以外の無駄なものを全部削ぎ落とされた私、がむしゃらな私、前田敦子じゃない私、監督が求めていたものはこれだったのかなって」


結果、ローマ国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀技術貢献賞を受賞。日本映画としての受賞は初という快挙を成し遂げた。以来、役をもらった時にはできる限りフラットな状態で挑むという。AKB48で分刻みのスケジュールをこなしてきた彼女にとって、ひとつの役にじっくりと向かい合うことができるお芝居の世界はとても魅力的。「自分になにかを求められることがうれしい」と、目を輝かせながら話す。


「『グーグーだって~』の飯田がちょっとしたきっかけで漫画家への決意を固めたように、人はきっかけさえあれば前に進めると思うんです。私にとっては出演する作品ひとつひとつが変わるきっかけ。だからこそ、小さな役でもいい、“演じる”場に出ていきたいんです」


かつてAKB48というトップアイドルグループのセンターにいた。そんな驕りをみじんも感じさせない普通の女の子。まっさらな前田敦子だからこそ、色を付けたいという監督が後を絶たないのだろう。ちょうどこの取材中もドラマ2本の撮影が重なっていた。しかしキラキラした瞳で興奮気味に話す彼女はそんな疲れをみじんも感じさせない。


「作品の撮影が重なるのは初めてで、大変だけどすごく楽しいです。昼間私が家にいないときは、母が時々猫ちゃんの様子を見に来てくれてるんですが、私以上に猫好きになっちゃって。最近気づくと猫模様の服とか着てるんですよね(笑)」


今後も期待作が控える彼女の挑戦はまだこれから。まっさらな彼女の歩いた道がいつか大きな虹を描くまで、彼女の一歩一歩を見守っていきたい。

プロフィール[Profile] 前田敦子 [まえだ あつこ]

1991年生まれ、千葉県出身。2005年、第1期生としてAKB48に加入。結成時から中心的メンバーとして活躍。2011年公開の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で映画初主演。2012年8月、AKB48を卒業後は女優として幅広く活躍中。

土曜オリジナルドラマ『連続ドラマW グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』
6月11日(土)スタート 毎週土曜よる10:00(全5話) 
※第1話無料放送
■シリーズ構成・監督:犬童一心 原作:大島弓子 脚本:高田亮 ■出演:宮沢りえ、長塚圭史、黒木華 / 前田敦子、西田尚美、イッセー尾形、田中泯、ほか

コミック累計80万部発行、少女漫画界の巨星・大島弓子の自伝的コミックエッセイをドラマ化。飼い猫との愛しい日々を描く。主人公の小島麻子役は、前作に引き続き宮沢りえ。映画、ドラマとシリーズを通して監督を務めるのは犬童一心。原作の世界観を踏襲しながらも連続ドラマとして新たなアプローチで再構築したオリジナルストーリー。


<STORY>
人気漫画家の小島麻子(宮沢りえ)は、東京・吉祥寺の井の頭公園を望む自宅兼仕事場で、グーグーとビーの2匹の猫と暮らしている。アシスタントのミナミ(黒木華)は、漫画家としての独立を考え始める。そんな中、ミナミの後任として飯田千里(前田敦子)が願い出るが、実は飯田は猫が苦手で…。


(C)WOWOW


スタイリスト 下田眞知子
ヘアメイク 千葉友子

女子ツク!peopleに関連する記事

この記事を読んだ人はこの記事も読んでます