働き方改革をきっかけに日本全体で労働時間が見直され、残業禁止の会社が増えましたが、一方で時間内に仕事が終わらないことを嘆く声も少なくありません。残業ありきで仕事を終わらせていた方は特にその傾向が強く、中には家に仕事を持ち帰る方もいるようです。
もし仕事を家に持ち帰った場合、作業分の残業代は請求できるのでしょうか?
上司が仕事の持ち帰りを命令した場合、残業代が発生する可能性がある
まず、上司の命令により持ち帰った仕事に関しては、作業にかかった時間分の残業代が発生する可能性があります。会社の指示で行った労働には給料を支払う義務があるからです。
もっとも、自宅作業のすべてが会社の指揮命令下に置かれているとはいえない場合もありますので、開始から終了までの時間の全部が労働時間として認められるかは明確とまではいえません。
独断で仕事を持ち帰った場合、残業代 は発生しない可能性が高い
他方、上司からの命令がないのに自身の判断で仕事を持ち帰った場合、残業代が発生する可能性は低いと思われます。上司の指示もない場合、会社の指揮命令下での作業であると評価することはさらに困難になるためです。
暗黙の了解で持ち帰りが強制されていた場合は残業代が発生する可能性がある
会社からの指示はないが、暗黙の了解で仕事の持ち帰りを促された場合は微妙なところです。状況からして、会社の指揮命令下の作業と判断される場合とそうでない場合に分かれると思われますので、ケース・バイ・ケースと言わざるを得ません。
職場と自宅は、前者が会社が支配する領域であるのに対し、後者は労働者が支配する領域であるため、同じ作業を行う場合でも評価は明確に異なります。上記のように会社の明示・黙示の指示で作業をした場合、これが職場であれば残業代は確実に発生するといえますが、これが自宅の場合はそうとも言い切れないのです。
まとめ
長時間労働を是正するための改革が、かえって持ち帰り残業の温床になりえるのは皮肉なことです。「仕事が終わらないから仕方がない…」と割り切って、家に仕事を持ち帰る方もいますが、長時間労働は過労死や精神疾患の原因になりかねません。
長時間労働に悩みがある場合は、自身の働き方の見直しや、可能であれば残業代の請求を検討してみてもよいでしょう。また、不当な作業量を課されている場合は別ですが、作業時間を減らす上で、作業の効率化を図ることも大切です。