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Interview 0027
独占インタビュー

ないものは求めてもない。だったら作るしかない。水光涼の”多動力”のヒミツ。

2017-09-19|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

堀江貴文の『多動力』という本をご存知だろうか?多動力とは、複数のことを同時に行なう力のことである。以前までは、ひとつの会社、ひとつの仕事で定年まで勤め上げることが当たり前とされてきた。しかし、今や転職が当たり前の時代。しかも副業すら一部企業では認められつつある。そんな現代では、この”多動力”こそ、ビジネスフィールドで求められるスキルではないだろうか。

そんな”多動力”にも等しいバイタリティで幅広く活躍しているのが、株式会社フェズの人事・広報・法務を担う水光涼(すいこう すずか)。彼女は司法書士業務の傍ら、終活のトータルサポートをおこなう「株式会社SAKURA」を設立した。「経営者の役に立つ人材になりたい」。その思いから、同志社大学を卒業後、株式会社リクルートエージェント(現 株式会社リクルートキャリア)へ入社。名刺代わりになるキャリアをつくるため、入社4年目にして、司法書士の資格を取ることを決める。資格取得のために働きながら、週に2回学校に通う日々。仕事と勉強の両立は思っていた以上に難しく、成績が上がれば業績は落ち、任されていた後輩育成もうまくいかなかった。全てが中途半端だと感じた彼女は、思い切って退職を決意。リクルートを辞めてからは勉強を続けながら、母が立ち上げた司法書士事務所を手伝っていた。

「1回目の受験を控えていた年の春、母がステージ4のガンであることがわかりました。病状があまり良くなく、私も試験どころじゃなくなってしまったんです。結局、その年の受験は諦めました。それからは母の看病をしつつ、勉強をする日々。母の病状も回復して、その翌年には試験を受けることができましたが、結果は不合格。どんなにだらしない生活をしていても怒られない、その代わりに何をやっても褒められることもない…いつしか”社会とつながっていない自分”に存在価値を見出せなくなってしまいました」

幸い、タイミングよく前職で得た知己が独立。水光にとってこの上ない好条件での就業の場を用意してくれた。そのおかげで社会とのつながりを取り戻した水光は、週に3日午前中だけ出社し、後はリモートワークで働き勉強するようになる。そして翌年の試験の結果は見事合格。現在働いている司法書士法人中央法務事務所に就職し、パートナー司法書士となる。しかし、翌年2015年11月、母の余命宣告が。

「余命宣告を聞いて、今まで母が築き上げてきた事務所をそのまま終わらせるわけにはいかないと思いました。最期まで戻れる場所を守りたかった。そこで、働いていた司法書士事務所の支店を実家のある大阪に作って、母の事務所を継承することにしたんです。母の娘ということで、お客さまはそのまま残ってくれると考えていたのですが…2/3のお客様が離れてしまい。自分は東京に戻り、事務所は第三者に委託することが理想でしたが、それでは娘に頼む意味がないと言われてしまったんです。このとき、改めて士業の属人性を感じました」

第三者に委託するという理想を、諦めざるを得ない状況に陥った。そのとき初めて「経営ってこんなに孤独で重圧にかかるものなんだと思った」と彼女は言う。

「それまでは司法書士法人の役員と言いながらも、数字的な面を見ているのは代表でした。正直、従業員の人生まで私が背負っているという感覚がそれほどなかったんです。しかし大阪事務所が経営の危機に面した時、はじめて事務所のスタッフの人生を左右することを実感。そのプレッシャーたるや、車の運転中に閉塞感で押しつぶされてしまいそうなときもありましたね」

そんな折、母の病状も悪化する。さまざまな壁が立ちはだかる中、この状況を突破するため、残ってくれたお客さまに今の思いを正直に話すことにした。腹を割って話すことで母の娘ではなく、1人の人間として向き合ってくれるようになったと彼女は語る。事務所の承継、譲渡、閉鎖までをやり遂げた水光。激動の1年を経験した彼女は、再び活動の拠点を東京の司法書士事務所に戻した。

「大阪の事務所を閉鎖した後は、もとの仕事に物足りなさを感じました。そんなとき、母の相続手続きが大変だったことを思い出したんです。専門的な仕事をしている私ですら大変なのに、一般の方だと何をどうして良いか分からないだろうなって思いました。そこで、相続に困っている人と、それを解決してくれるプロをマッチングするサービスを作ろうと決心したんです。それが、株式会社SAKURAで行う「さくら相続」というサービスです」

その後、大学時代の友人から声をかけられ、設立登記を手伝ったことをきっかけに株式会社フェズへジョイン。現在の水光の仕事は司法書士、会社代表、ベンチャー企業の人事・広報・法務と多岐にわたる。そんな彼女に自身の働き方について聞いてみた。

「司法書士と人事の仕事は全く違うものなんですけど、私の中では平行じゃなくて。どこかで絶対掛け合わされると思っているんです。なので、最近流行りの”パラレルキャリア”というよりも、”二足のわらじ”のように一つの身体でいっぱい履きこなすという方がしっくりきています。フェズのお客さまからのご紹介で司法書士の案件になっていることともあるし、逆も然りなので。そういった働き方ができるのはありがたいですね」

核としてつながることはあっても、並大抵の努力ではこなせない。二足、三足…とわらじを履きこなし続けられている理由を彼女に聞いてみた。

「本当に人に恵まれているんですよね。昔、母も言っていたんですけど、自分は大したことないんです。周りに恵まれているから、その人たちのお陰という感覚が強い。お世話になっている人の期待に応えられるように行動しています。求めてもないものはないので、作るしかない(笑)と思っているので、新しい環境になっても何とでもなると思っています(笑)」

周囲の人々を惹きつけているのは、彼女の謙虚で前向きな姿勢だろう。司法書士に人事、広報、法務…幅広いタスクをこなす彼女の姿は、未来の女性のロールモデルとなるに違いない。

プロフィール[Profile] 水光涼 [すいこうすずか]

1984年1月15日生まれ。リクルート時代の同僚が創業メンバーの1人という縁がきっかけで、株式会社FEZの設立登記に携わる。その後、バックオフィス担当として本格的にジョイン。現在では人事・広報・法務など会社の運営を支えつつ、司法書士や会社代表という二足(三足?)のわらじを履く生活。休日はジムでランニングをしたり、”生きていく上で学んでおくべき知識”をプロから学ぶためのコミュニティー「さんど会」を開催。月に一回、プロと”つながれる場”を作っている。

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