『CanCam』など数々のファッション誌などで活躍。その後、女優デビューも果たし、映画やドラマなど数々の作品で活躍してきた臼田あさ美。最新出演作となる映画『愚行録』では、主人公の田中に情報提供をする女性カフェオーナーを演じている。惨殺された女性の元友人でもある、宮村淳子役を演じた心境をこう語る。
「演じておいてこんなことを言うのも何ですが、淳子ってちょっとクールでミステリアス、一見何を考えているのかわかりにくい女性なんですよね。さらにこの作品では人間の表の姿だけでなく、裏側も描かれるから。淳子が主張していることも、元カレに言わせると180度真逆だったりして、一体どっちが彼女の本当の姿なのか?わからなくなる。本音が見えにくい分、演じるのにも少し戸惑うことがありました」
模索した結果、ひとつの見え方にこだわるのはやめて、さまざまな人たちが持つ淳子の印象を探りながら役を微調整していった。言い回しひとつにも気を使った。緊張感が漂う現場で、1番共演時間の長かった妻夫木聡にとても助けられたという。
「私が監督に相談している時も、妻夫木さんはイヤな顔ひとつせずにずっと待っていてくれたんですよね。私なんかより演じるシーンはずっと多くて大変なハズなのに。 “納得いくまで話して、思うように演じて大丈夫だよ”という空気を作ってくださったんです。そのおかげで心に余裕ができて、安心して演じることができました」
モデルからキャリアをスタートし、その後、女優デビュー。きっかけとなった作品の話を聞くと、厳しい演出で知られる園子温監督とのこんなエピソードが飛び出した。
「20歳の時に園子温監督の『夢の中』という映画に出演させてもらったんですけど、実は一度オーディションに落ちてるんです。会場が園監督の自宅で、それだけでもう緊張マックスだったところに、渡された台本を見たら“ヒザにまたがって、キスをする”と書いてあって、もう頭真っ白。演じてみたものの『無理だよキミ、子どもにこんな役できるか』と厳しいお言葉をいただいて(笑)。でも後日、主人公の妹役という新たな役で呼んでいただいて。何回もやり直しをくらったりもしましたが、それが当たり前だと思ったし、特に厳しいとも思いませんでした。むしろ一度オーディションで落ちたど素人の私に役を用意してくださるなんて、優しいですよね(笑)。意外にも楽しかった記憶しかないです」
求められるのが「美」だけじゃない芝居の世界。その深みと新鮮さにどんどんハマっていった。ドラマや映画、ホラー、ラブロマンス、ヒューマンドラマ、コメディまでさまざまな作品に出演し、そのたびに多くのことを学んだ。そしてその学びを見てくれている人がいるのも大きな励みだ。
「一度共演した俳優さんやスタッフさんと他の現場で一緒になったときに、きちんと成長を感じ取ってもらえる自分でありたいと思っています。『あれ?こんなにうまい女優さんだったっけ?』って思われるくらいにはなってたい。実は妻夫木さんとも20歳の時に一度共演したことがあったんですが、彼曰く、当時の私は『アドリブ振っても無視された』というくらい余裕がなかったみたいで(笑)。今は撮影の合間にそんな笑い話ができるくらいにはなってきた。冗談まじりに『変わったね』って言われたりして、そんな些細なことがすごく嬉しかったりします」
次に再会したときにはさらに成長した自分になっていたい。その思いが女優活動を続けるうえでのモチベーションにもつながっている。当然、自分自身も相手の成長を目前にし、驚かされることもあるが「相手の成長や新しい側面を見られるのもうれしい」という。自分と人を比べて焦ったりすることはないのだろうか?
「10代や20代前半くらいは、周囲とくらべて劣等感を感じたりすることもあったけど、今は人と自分の差とかそういうものをあまり気にせずに進めるようになりました。自分の気持ちに正直に、無理だと思ったらやめる、面白いと思ったら進む。良いときも悪いときもあって、それぞれ必要なタイミングでやってくる。そう思うようになりました。マイペースじゃないですけど、どこにいても、やりたいことや好きなことがある人間が一番強いんじゃないかなって。なんかこれ、淳子が言いそうなセリフですね(笑)」
クールな語り口で話すかと思えば、少女のような笑顔でほほ笑む。油断できない世界に身を置きながらも、無理に前に進もうとはしない。そうでありながら、確かな存在感で、的確な演技でしっかりとツメ跡を残す。次の作品ではまた、ひとまわりも、ふたまわりも、大きくなった“臼田あさ美”に出会うことができる。共演者も、スタッフも、そしてもちろん私たちも。
プロフィール[Profile] 臼田あさ美 [うすだあさみ]
1984年10月17日生まれ、千葉県出身。
15歳で、モデルデビュー。女性ファッション誌『CanCam』、『AneCan』などの専属モデルとしても活躍し、2003年、TBS系ドラマ『ひと夏のパパへ』で女優デビュー。以降、ドラマ、映画、CMなどで活躍。テレビ東京系ドラマ『銀と金』(土曜深夜0時20分~)に出演中。
映画『愚行録』
2月18日(土)全国公開
■監督・編集:石川慶 原作:貫井徳郎 脚本:向井康介 ■出演:妻夫木聡、満島ひかり、ほか ■上映時間:120分 ■配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
「映像化不可能」と言われた、貫井徳郎の問題作『愚行録』を映画化。監督は長編映画初デビューともなる石川慶。妻夫木聡、満島ひかりなどの若手実力派俳優が熱演。ラストに向かって仕掛けられた3度の衝撃に息をのむ、ミステリーエンターテイメント。
<STORY>
幸せなエリートサラリーマン一家を襲った惨殺事件。犯人不明のまま一年が経ったころ、週刊誌記者・田中(妻夫木聡)が改めて事件の真相に迫るべく、関係者に取材を開始する。証言から浮かび上がってきたのは、殺害された夫婦の隠された姿。一方、田中の妹・光子は育児放棄の疑いで逮捕されるが……。
(C)2017『愚行録』製作委員会
ヘアメイク:根本亜沙美
スタイリスト:森上摂子(shirayama office)