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支えてくれたのは“繫がり”

「ビットコイン(Bitcoin)」と呼ばれる仮想通貨があるのをご存じだろうか?「暗号通貨」とも「電子決済」とも呼ばれ、手数料が極めて安価なことから今最も注目される決済ツールである。そのビットコイン業界で「ミスビットコイン」と呼ばれるひとりの女性がいる。株式会社グラコネの代表取締役・藤本真衣だ。

彼女の仕事はひと言でいうと「ビジネスマッチング」。たとえば日本の会社Aが、ビットコイン関連事業を起こそうとしている。「情報共有できそうな人、誰かいないかな?」という相談を受けて、Bというサンフランシスコのビットコイン関連会社を経営する社長を紹介する。彼女はそれを「繋ぐ」という。

「もともと私の周りには第一線で活躍されている素晴らしい方がたくさんいて、その人たちが繋がったらもっとパワーアップするだろうなと、『紹介したい!』と思ったのが、今の仕事をスタートしたきっかけです。社名の由来も、引力や重力を指す“gravitation”に、繋ぐを意味する“connect”を合わせて“グラコネ”。いろいろな方の“ご縁を繋げる”のが私の仕事です」

このように人と人、人と企業、企業と企業をつなぐ「ビジネスマッチング」には、難しい部分もある。紹介フィー(仲介料)を定めるのが難しく、「お金にならない」というイメージを持っている人も多い。

「始めた当時はやっぱり周囲の反対もありましたね。『マッチングは飛ばされることがあるからやめたほうがいい。いいように利用されて終わりになるから』って。確かに最初はお金にならないこともあったし、『ありがとう』の言葉ももらえなかったり、私が紹介したことすら忘れられてたり……モヤモヤしている時期はありました。もともと、自分が『繋ぎたい!』と思ったから始めたのに、気づいたら感謝されるためにやってるような感じになってたんですよね。でも『繋ぐことから生まれたプロダクトやプロジェクトが結果的に社会に役立ち、”三方よし”なプランになればそれでいい!』そう考えるようになってからはスッと楽になりました。ありがたいことに、今ではきちんとビジネスとして成立しています。」

ちょうど1年程前に大きなトラブルに巻き込まれ、会社存続の危機に陥ったことがある。その時も周囲の人たちに助けられた。

「最近出版した著書『人生を変える繫がりの法則』でも書いてるんですけど、取引先の会社で問題が発生し、1000万近い契約の入金が飛んだ時はさすがに青くなりました。発注なども済ませている段階だったので、外注先にはお金を払わないといけないし、スタッフにもお給料を出さないといけない。自分でどうにかするには大きすぎる金額を前に呆然としていました。そんなときも助けてくれたのは周囲の人たち。新しい仕事を任せてもらったり、私の経営者として足りてない部分を叱ってくださったり、手続きを手伝ってもらったり、励ましてもらえたり。“繫がり”を大切にしている人たちに助けられて命拾いしました。良い時期よりも、辛い時期に見捨てずに居てくれる繋がりって本物ですよね。あの時助けてくれた方々には、本当に感謝してもしきれません」

今の会社を立ち上げたのは2014年1月。それまでさまざまな仕事に携わってきた彼女が一番最初に就いた仕事は、完全報酬型の家庭教師のコーディネーター。子どもが好き、人が好きな彼女は、あっという間にグループ企業内No.1の営業マンになる。その後、27歳の時に上京。今や会員数100万人以上を誇るWebメディア『キッズ時計』の立ち上げに携わる。

「本社が関西なので、上京する前から手伝わせてもらっていて、『キッズ時計』の東京進出に合わせて私も上京。右も左もわからないなか、子ども向けのプロモーションに賛同していただけそうな企業にタイアップを提案したり、商業施設にイベントの提案をしたりと、さまざまな売り込みをしていきました。そもそも『キッズ時計』の仕事を始めたのも、家庭教師のセールスをしていた時の顧問からの紹介なんです。私が『東京でもっと大きなことにチャレンジしたい!』と言ったときに、『いきなり上京するんじゃなくて、神戸に良い社長がいるから、しかも君の好きな子ども関連のビジネスだから、そこで少し修行をしなさい』と繋いでいただいて。これが今の仕事のルーツでもあります」

今や『キッズ時計』はもちろん、さまざまな分野の仕事に携わる。そんな彼女が現在一番力を入れているのが、冒頭でも挙げた“ビットコイン”を使ったプロジェクトだ。

「『絆プロジェクト』というのを今立ち上げていて。ビットコインの海外送金手数料が安いというメリットを活かしたドネーションサイトなんですが、例えばNPOやNGOが10万円送るときに銀行からだと6000円くらいの手数料がかかるのが、ビットコインだと20円しかかからない。その差額の5980円分で世界中の恵まれない子供たちに、さらに栄養食を送ったりすることができます。“寄付されたお金を一円でも多く届けたい“そんな思いから生まれたプロジェクトです」

『絆プロジェクト』はクラウドファンディングでも大きな反響を呼び、彼女の思いに賛同する多くの人や企業が協賛の手を挙げた。現在、サイトオープンに向けて進行中のこのプロジェクトの他にも、子ども向けの仕事に積極的に参加している。そんな彼女が最近よく行動を共にしているのが、パラリンピックの銀メダリスト・上原大祐という人物である。

「上原さんが理事長を務める、『D-SHiPS32』というNPO法人に所属して、子ども向けのイベントなどに協力させていただいてます。彼の実現力はすごいんです。車いすの子どもたちが「学校の遠足でお芋ほりに参加できなかった・・・」と悲しんでたら「俺がお芋ほりさせてやる!」って。そこから長野の畑を耕して、種を植えて、本当にお芋ほりをさせてあげたり。「足が悪いから縄跳びができない」という子どもたちに「ほら!できるでしょ!!」って車いすのまま、時には逆立ちで縄跳びして見せたり。私もそうやって背中で示してあげられる大人になりたい」

今後は「海外と日本をつなぐグラコネ、大人と子どもをつなぐグラコネ」に力を入れていきたいと言う。そこには長年触れてきた子どもたちへの思いがこもっている

「家庭教師のコーディネーターをしていた時に、周囲のちょっとした言葉や行動に傷つけられ、自信を無くしてしまう子どもたちをたくさん見てきたんです。純粋だからこそ、影響を受けやすい。だからこそ、良い大人たちを繋いでいきたいって、そう思うんです」

「子どもたちの可能性と繊細さに触れ、たくさんの笑顔に癒された」と語る彼女。しかしきっと同じくらい、もしかしたらそれ以上に、彼女の活動に、彼女という存在に救われた子どもたちがいる。彼女と繋がっている限り、子どもたちの未来は明るい。