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隣の人を輝かせることに、身を捧げたい

2016年、連続ドラマ『重版出来!』から始まり、出演映画の公開も3本控えるオダギリジョー。23歳の時に俳優という仕事をスタートし、今年で17年目。ここまでずっと出演依頼のオファーが絶えない実力派。

クールなたたずまいからか、どこかエキセントリックな個性の強い役を演じる印象を持つが、9月17日(土)から公開となる最新主演作映画『オーバー・フェンス』では、都会での生活に疲れ、故郷に帰ってきた、冴えないバツイチアラフォー男・白岩を演じている。その姿に違和感はない。むしろ、どこか投げやりな役に生々しいほどの息吹を与えている。白岩という男を理解するとっかかりとなったのが、蒼井優演じる聡(さとし)に言われた『そんな目で見ないでよ』というひと言だと語る。

「自分の人生でもまったく同じセリフを言われたことが何回かあるんです。どこかさげすんだ眼というか、冷めた目をしていることがあるみたいで。もちろん、自分ではまったくそんなつもりはなくて、いつも弁明するんですが、そんなところまでまったく同じで。『ああ、こいつもか』って(笑)。そこから、白岩という男を広げていくことができました」

共感できる部分をあつめて、つなぎ合わせ、白岩という男を作り上げた。その作業は案外難しくなかった。ふとしたきっかけで、白岩のように堕ちていく可能性は誰しもが持っているという。はたから見たら“完璧”と思える俳優でも、そんな弱さに共感できるというのは意外だ。

「境遇こそ違えど、似ているところはたくさんあって。白岩のセリフで『自分は壊すほうだから』というのがあるけど、気づかないうちに他人を傷つけていたりとか、尊重できてなかったりとか、そんなことって誰しもありますよね。もっと言うと、今は都会でバリバリ働いているような人でも、白岩のようになる可能性もある」

東京での生活から逃げるかのように、故郷・函館に帰ってきた白岩。自身も俳優という仕事に行き詰まったり、仕事をリセットしたいと感じることがあるという。そんな時はどのように気持ちを持っていくのだろうか?

「『頑張らないと!』とか、無理して自分の気持ちを動かすことはしないですね。もう見たまんまだと思うんですけど(笑)、正直な気持ちのままでいます。俳優という仕事を見直したいという気持ちは常に持っていて、それが40歳なのか、50歳なのかわからないけど。でも何かしら大きなきっかけを持つ日が来るだろうから、その時にじっくり考えてみようと思ってます」

“無理して自分をもっていくのではなく、流れに身を任せてみる”そんなスタンスは、白岩にも共通しているのかもしれない。自身も40歳を迎えたターニングポイントで、大きく変わったことがある。連続ドラマ『重版出来!』に出演していた時のこと。

「撮影中、ふと気づくと小日向(文世)さんと、高田(純次)さんと、松重(豊)さんしか先輩がいなくて、あとは同世代か年下の俳優さんばかり。ああ、自分はもう中間管理職みたいな位置にきたんだなって。だったら、自分がすべきは勢いのある若い後輩と、脇を固めるベテランの先輩たちの間をつなぐような芝居なんじゃないか。前に出すぎず、でも味は薄過ぎずみたいな芝居をするべきなんじゃないか、そういう風に考えている自分がいました」

自分がこうしたい、ではなく、自分だからこそできることをしたい。そうやって作品を支えたいと語る彼は、取材中もインタビュアーへの配慮を欠かさない。表現がわかりづらいと感じたのか「例えば…」と続ける。

「『重版出来!』でいうと黒木華さん、『オーバー・フェンス』でいうと蒼井優さん。彼女たちを魅力的に見せるために、僕はどう動くべきか、どうサポートすべきかってことを常に考えながら演じてました。隣に立つ人のために、身を捧げるという意識が強くなってきているのかもしれないですね」

周囲がより映えるように、動く。月と太陽でいうと、月。夜空を照らすように、作品を輝かせ、周囲を輝かせる。そこまでしても、彼の圧倒的な存在感と、オーラはスクリーンからあふれだす。彼の放つ光は、映像の中だけでなく、観る側の心まで照らすのかもしれない。

満島真之介 独占インタビュー|感じることが、生きている証