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門前払いも当たり前!?女性フードコーディネーターの快進撃!

美容栄養アドバイザー、石坂優子の経歴はちょっと異色だ。高校卒業後ホテル等で働き、2007年にミス・ユニバース ジャパン ファイナリストに選出。その後、食に関することを学び、同時に栄養士の資格を取得、ミス・ユニバース ジャパンのトレーニング講師として食事指導をおこなう。現在は、美容栄養アドバイザーとして大手飲食チェーン店やスーパーマーケット等のメニュー開発に携わり、アドバイザー業務や食育講演なども兼務している。

今でこそ、“食”のスペシャリストであるが、10代の時に働いていたホテルでの勤務はあくまでサービス業、料理や食材にまったく興味がなかった彼女が“食”の道へ足を踏み入れたのは一体何が原因なのだろうか?

「きっかけは19歳の時に応募したミス・ユニバース ジャパンの選考会。私を含め、ファイナリストに選ばれた11人は、候補者の女性たちが“食”ですごく苦労していたんです。当時ミス・ユニバース・ジャパンでも食のコンテンツまでは展開していなくて、“ファスティング”や、“酵素ダイエット”などはもちろん、今のような“きれいな身体を作るための食事”に関する知識やメソッドの普はまだまだ。候補者の中には無理なダイエットや、逆に増量など、世界基準の身体づくりを無知なまま行なっている場合もありました。なかには夜な夜なホイップクリームを飲み干し、体を壊して入院しちゃった子まで出てきてしまったり。これは日本の大きな問題なんじゃないか、同じ女として何とかしなきゃって、大袈裟じゃなくそう思ったんです」

“女性が美しく健康でいられるよう、食生活をサポートしたい!”そう決意した彼女は、大会終了後、短大で食物のことを学びながら、同時に栄養士の資格も取得。さらに、フードコーディネーターの仕事を手伝ったり、レストランで働いたり、帰宅後も深夜まで勉強の日々。無事学校を卒業した後はそのままフリーランスの道へ。美容と健康に関するレシピを作り、自身の活動をWebの媒体や雑誌に売り込む。「“20代は苦労する年”と決めて、来た仕事は全部受けてました」仕事をしながらも、さまざまなセミナーにも参加していた。まさに寝る間も惜しみ、“食”の道まっしぐらに進む彼女に26歳の時、転機が訪れる。全国展開する、某大手外食企業社長との出会いだ。

「アメリカのマーチャンダイジング研修に参加していた時に出会って『私が社長をつとめるレストランでメニューレシピ作ってみないか?』と声をかけていただいて。レシピを作るのは大好きだったので、ふたつ返事で請けさせていただきました。全国規模のレストランのメニュー開発に携われるなんて夢のようですよね」

“美容と健康に良いメニュー”というリクエストを受けて、ここで彼女は爆発的ヒット作を生み出す。しかし、同時に美容栄養アドバイザーとして一番つらかったのもこの時期だと語る。 「自分のなかで“こんなメニューを作ろう”というのはすぐに決まったんです。自信満々でプレゼンしたんですが玉砕(笑)。全然受け入れてもらえなくて、でも『絶対これはいける!』って確信もあったので、何度も手を変え品を変え説得して、最終的には社長の『これはいけるかもしれない』という鶴の一声で発売までこぎつけることができました」

この大手外食企業の話に限らず当時、料理の世界はまだまだ男性社会。プレゼン先にいる相手は百戦錬磨の営業マンや、この道何年のベテラン商品開発者、若い女性がひとりで切り込んでいっても鼻から聞いてもらえないのは当たり前で、門前払いをくらうことも多かったという。老舗でもベンチャーでも、大企業でも個人経営でも、女性向けメニューだろうが美容系メニューだろうが、最終決定をくだすのはスーツをきた40代、50代の男性。そんなことは、現在でもまだまだ当たり前のことだったりする。

「今でこそ、ご飯の上にサラダが乗って、その上にステーキが乗ってというサラダ丼とかも当たり前になってますが、当時はそんなもの無かった。提案しても『そんな……米の上にサラダ乗っけるなんて……!!』みたいな(笑)。野菜たっぷりのそぼろ丼を提案したときも『なんだこれは!!ネコまんまか!?』って言われたり。笑顔貼り付けながらも内心はわなわなしてました(笑)」

女性に届けるためには、まず彼らを説得しなければならない。一度ダメ出しされても、言い方を変えたり、忘れたころにもう一度プレゼンしたり、ありとあらゆる方法を試した。きつい物言いのメールが届き、泣いたこともある。もちろん “辞めようか”と思った瞬間も数え切れないほどある。しかし、そのたびに思いとどまることができたのは“自分が仕事をしているのは誰のためか”を明確にしていたから。

「私は地位や名誉のためにやってるわけじゃないし、お金のためでもない。もっと言うと、企業や店舗のためにやってるわけでもないんです。女性の食生活をサポートするために、内側から美しく健康的な生活のお手伝いをしたくてやってる。女性の消費者に届かなければ意味がない、男性に反対されようがくじけちゃいかん!とそこだけを見失わないように頑張ってきました」

そんな彼女の姿勢や熱意は当然企業側にも届く。デニーズをはじめ、大手飲食店チェーンからメニュー開発の声がどしどし届くようになり、ここ数年はレシピ作りに没頭する日だった。そんな彼女、実は今年6月25日に出産し、現在は育休中。自宅でできるコラムの執筆やレシピ開発は続けつつも、コンサル的なお仕事などはセーブ中。子どもが生まれたことによって、かかわる仕事の幅も広がるだろう。現に妊娠中から食育に関する講演や、子どもの成長にかかわる“食”のコンテンツなどの仕事も増えてきている。しかし、彼女のコンセプトはあくまでぶれない。

「一番は女性のため。お母さんが子どもと一緒においしいもの食べてきれいになるとか、産後体系を戻すためのメソッドとか、女性がきれいなママでいたいと思う、その気持ちを手助けしていきたいですね」 なんとも心強い言葉である。『女性の敵は、女性』という言葉があるが、彼女を見ていると『そんなことはないんだ』とホッとすると同時に勇気が出る。彼女の作るレシピはどれもヘルシーで、そしてどれもとびきり美味しそう。信念をつらぬき、女性のために戦ってきた、そんな彼女がいる限り女性の未来はきっと明るい。