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Interview 0019
独占インタビュー

「がんばれ」じゃなくて「大丈夫」

2017-01-13|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

第44代アメリカ合衆国バラク・オバマ大統領が演説中に発した「Yes We Can」というフレーズ。多くの人々が胸を打たれたこの言葉の影には、本人に代わって演説原稿を執筆する“スピーチライター”の存在があった。最近では、安倍晋三内閣総理大臣のスピーチでも起用され、日本でも注目が集まっている職業である。


1月14日(土)夜10時からWOWOWにて、その影の職業“スピーチライター”にスポットを当てた『連続ドラマW 本日は、お日柄もよく』が始まる。新米スピーチライター“二宮こと葉”を演じるのは、WOWOWドラマ初主演の比嘉愛未。彼女から見たスピーチライターの印象は?


「まず、スピーチライターの仕事の幅広さに驚きました。原稿を作るだけじゃなくて、話し方のレクチャーをしたり、情報収集したり、スーツのコーディネートまでしてあげることも。その人の見え方すべてをプロデュースするために影でフルに動き回っていて、いわばクライアントさんを演出する総指揮的ポジション。それって、舞台で言うと“演出家”さん、映画やドラマで言うと“監督”のような感じで、色んな部署に気配りしたり、役者が舞台に立つ時に自信を持って体と心を開放して表現できるように導く。それに近いのかなって思いました」


今回のドラマで監督を務めるのは映画『半落ち』(2004年)で、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した佐々部清監督。人間ドラマに定評のある演出は俳優の支持も高く、ラブコールも絶えない。彼女自身も「ずっと一緒に仕事をしたいと思っていた」憧れの監督。その演出は、やはり期待以上だった。


「誰よりも繊細で、アツくて、そして涙もろい。優しいだけじゃない、厳しいところもある方です。でも、本当に大事なシーンの時は、そばに来てポンと背中を押すようなひと言をかけてくださるんです。今回も初めてのWOWOWドラマ、しかも主演というプレッシャーを背負う私に、『無理に演じようとしなくていい、“比嘉愛未”と“こと葉”、2人が合わさって“まな葉”になればいいんだよ』って言ってくださって。その瞬間、スッと肩の荷が下りて。“こと葉”を演じるのではなく、不器用ながらも頑張る“まな葉”になればいいんだ。役を作るんじゃなくて、心と体を使って演じることの大切さに気付くことができました。佐々部監督は自然と高みへと連れてってくれる、偉大な監督だと思います」


演じれば演じるほど“こと葉”と同化し、“まな葉”になっていく。そう思える役は決して多いわけではなく、でも「必要な時にめぐってくる」と言う。

「昨年30歳の誕生日を迎えたんですけど、その前の20代最後の年はやっぱり色々と考えたりもして。大きな次のステージを目の前にして、女優として今後どう進むべきか悩んだり。でもそんな時にこの役に出会えて、“迷ってるのがもったいない!”って思ったんです。こんな素敵な作品に参加する機会をいただけて、こんなにやりがいを感じられるなら、もっともっと挑んでいこう!って。30代を楽しまなきゃ損だって。そういう気持ちを持つことができたのはこのドラマがあったからだと思います。ターニングポイントに出会うべくして出会えた作品なんです、きっと」


迷いながら、悩みながらも、自身できちんと答えをみつけていく。意外にも彼女は自分のことを「負けず嫌い」と言う。そこにはデビュー当時のエピソードがある。


「18歳の時、映画『ニライカナイからの手紙』という作品で初めてお芝居の機会を与えていただいて。当時、地元の沖縄でモデル活動をしていて、演技の経験はゼロでした。でもドラマや映画が大好きでよく観ていて、“もしかしたらこれなら自分にもできるんじゃないか”って思ってたんですよね。オーディションで選ばれたこともあって、うぬぼれてたんです。ところが、いざ撮影が始まると頭が真っ白になってしまって。主演の蒼井優さんと言葉を交わすシーンで、私のセリフはたったの3行なのに、NGを何度も出してしまい、恥ずかしくて、そして、悔しかった。演じることを安易に考えていた自分、できなかった自分、度胸のなかった自分に腹が立って。“このまま終わったら絶対後悔する!”って、家に帰ってすぐ『東京に行かせてください!お芝居の勉強をさせてください!』って親にお願いして、一年だけという猶予付きで東京に出て来ました」


悔しさをバネに上京後は芝居の機会をうかがい、オーディションも精力的に受けた。結果、上京してからちょうど一年後にNHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のヒロインオーディションで2156人の中から選ばれる。あの時失敗しなかったら、自分自身の秘められた野心に気づくこともできなかった。女優になることすらなかったかもしれない。躓いた後も自分の力で立ち上がり、時に悔し涙を流しながらも前に進む、その姿は新米スピーチライターとして奮闘する“こと葉”の姿ともかぶる。最後に今回演じた“スピーチライター”という職業にかけて、好きな言葉を聞いてみた。


「たくさんあるけど、ひとつ選ぶなら“大丈夫”という言葉です。迷ったり落ち込んだりしたときに、家族や友達が言ってくれたこのひと言に救われたことが何回もあるんです。“がんばれ”じゃなくて“大丈夫”。沖縄風に言うと“なんくるないさ~=なんとかなる”に近いのかもしれないです。くじけたことがあっても、絶対何日か後には笑ってるからって。だから絶対乗り越えられる“大丈夫だよ”って、その言葉でどんなに落ち込んでても勇気が出てくる。自分でも単純だと思うけど(笑)、言葉の力ってやっぱり偉大ですよね」


失敗しても大丈夫。間違っても大丈夫。くじけずに前を歩く、努力をすればきっといつか良い日が来る。これまでも、これからも。

プロフィール[Profile] 比嘉愛未 [ひがまなみ]

1986年6月14日生まれ、沖縄県出身。2005年、映画『ニライカナイからの手紙』で女優デビュー。2007年4月、 NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』オーディションにて2,156人の中からヒロイン役に抜擢される。以降、映画、ドラマ、CMなど、幅広く活躍。

土曜オリジナルドラマ『連続ドラマW 本日は、お日柄もよく』
1月14日(土)スタート 毎週土曜よる10:00(全4話) ※第1話無料放送
■原作:原田マハ(徳間文庫) ■監督:佐々部清 ■脚本:谷口純一郎 ■出演:比嘉愛未、長谷川京子、渡辺大/石橋蓮司、八千草薫(特別出演)/速水もこみち、船越英一郎、ほか 

泣けて、元気が出ると人気を博し、ついに40万部を突破した原田マハのベストセラー小説『本日は、お日柄もよく』をドラマ化。世界を動かしてきた“影”の職業スピーチライター。スピーチライターとは何なのか?比嘉愛未演じる主人公:二ノ宮こと葉が、言葉の限りない可能性を追求していく職業ヒューマンドラマ。


<STORY>
老舗製菓会社で働く 二ノ宮こと葉(比嘉愛未)は幼なじみ・今川厚志(渡辺大)の結婚式で、伝説のスピーチライター・久遠久美(長谷川京子)の祝辞に心を揺さぶられる。一方、会社の一大プロジェクトメンバーに抜擢され、社長のスピーチ原稿を書くことになるが、コピーライター・和田日間足(速水もこみち)のトーク力に完敗。一念発起したこと葉は、久美の事務所に押し掛け “弟子”として働くことになるが…。



(C)WOWOW


ヘアメイク:奥原清一(suzukioffice)
スタイリスト:後藤仁子
衣装協力:ソブ(フィルム)
Shaesby(Shaesby 伊勢丹新宿店)

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