女子ツク!people [株式会社LAWSON マーチャンダイザ―:浅岡陽子]記事一覧
Interview 003
独占インタビュー

“高くて、おいしい“はあたりまえ、それ以上の価値を創造するのが使命

2016-05-13|女子ツク!編集部女子ツク!編集部

“プレミアムロールケーキ”の発売でコンビニスイーツ界に革命を起こしたといわれる株式会社ローソン。その後も、絶品スイーツを続々と打ち出し “ウチカフェスイーツ”というブランドを確立、OLから主婦まで幅広く支持されている。


コンビニ商品とは思えぬクオリティの商品たち、完成までには何十回と試食、そしてプレゼンが重ねられるという。そんな現場の甘くて壮絶な舞台裏は昨年出版された『ひみつのローソンスイーツ開発室』というお仕事コミックにも描かれている。「へこたれなくなった」と笑いながら語る商品開発3年目の浅岡陽子さん、彼女も主人公のモデルになったひとりだ。


「コミックでは先輩と私を含め、3~4人分のエピソードが入っているんですが、読むと当時の甘くて苦い思い出がよみがえってきます(笑)。私の話は2015年10月に発売された“スイートポテト”と2015年6月の“プレミアムロールケーキ”のリニューアルです」


2015年秋に発売された “スイートポテト”は浅岡さんが初めて開発責任者を任された商品。しかし、そこで大きな失敗を犯してしまう。


「“スイートポテト”で企画からプレゼン、商品化まですべて担当させてもらうことになったんです。有名ケーキ店から町のケーキ屋さんまで、あらゆるスイートポテトを試食し、トレンドを分析。しっとりとイモ感をテーマに、早い段階で“安納芋”を使うことを決めて、プレゼンぎりぎりまで改良を重ねました。でもこれが大失敗。部長プレゼンで酷評を受けるどころか、食べてももらえなかったんです」


通常、商品化までにはまず開発部長のプレゼンをクリア、その後社長&役員のプレゼンをクリアしなければならない。“スイートポテト”はその第一段階でつまづいてしまう。部長に「話にならない!」と突き返されたその理由とは?


「“理想のスイートポテトをつくるため“の原料選びができていなかったんです。また当初の計画よりも単価も上がってしまった。“安納芋”はサツマイモの中でも高級品、当然原価も売価も上がる。でも私は『サツマイモといえば安納芋だし、高くても大丈夫!』と安易に考え、“理想のスイートポテトをつくるため”にはどのサツマイモがベストのか、という過程をスルーしてしまったんです。『美味しいし、お客様にとって高い金額を出す価値はある』と説明する私を『それはお前の価値観だろう。誰のための商品かよく考えろ』と部長は一蹴しました」


かつて“プレミアムロールケーキ”を生み出し、“ウチカフェスイーツ”ブランドを築き上げた部長からの厳しいひとこと。しかし、そこには何よりもお客様を思っての気持ちがあった。


「『ブランド力もあるし、お客様もついてくる』というおごりがあったんですよね。でもスイーツってあくまで嗜好品、特に女性にとっては“ご褒美”的な側面も強いですよね。実際に市場アンケートでも『スイーツは私にとってのご褒美です』という方も多いし、売り場でも『予算オーバーだけど、今日は仕事を頑張ったし買っちゃおうかな』なんて会話をしているOLさんたちを見かけたこともあります。そんなお客様の声を無視して、価格を抑える努力を怠った。当時は泣けるほど悔しかったけど、今思えば『一から考え直せ!』と怒られるのも当然です」


その後、サツマイモと生クリームの配合を何度も見直し、理想のスイートポテトといえる味わい、食感、価格を実現することに成功。無事プレゼンを通過し、発売。お客様からも「味も見た目もサツマイモ!」と大好評を得るひと品となった。

“ウチカフェスイーツ”への深い愛と情熱。浅岡さん自身、さぞかし甘いものが好きなんだろうと聞くと意外な返事が返ってきた。


「実は今でこそ、話題のスイーツを食べ歩きしたりしますが、昔はどちらかと言うと甘いものは苦手でした。商品開発に配属になった当時も度重なる生クリームの試食がつらくて、仕事以外でスイーツを食べるのなんて無理。レストランで『最後のデザートいかがですか?』って聞かれても『いりません』って即答してたほど(笑)。食べることより売ることのが好きだったんですよね。新卒でローソンに入社して、最初は店舗に配属されたんですが、売り場のレイアウトや仕掛けを考えるのが楽しくて。お客様の導線を考えながら、『ここでこれ買ってもらって~』とシミュレーションしたり、おすすめ商品を多めに仕入れてみたり、あらゆる構成や仕掛けを試しながら売り上げを伸ばしていきました」


どんな商品をどんな見せ方をしたらお客様の心により響くのか? そんな試行錯誤は現場で働くころからされていたのだろう。そして“ウチカフェスイーツ”との出会いもこのころ。


「なかでも一番楽しかったのが“ウチカフェスイーツ”のシーズンズコレクション。毎週、ハイレベルなクオリティのスイーツが納品されるのが楽しみで、マカロンやサバラン、ミルフィーユが登場したヨーロピアンセレクション発売の時なんか『コンビニでこんなのが買えるの!?』って思わず声を上げるほど衝撃的でした(笑)。そんな力の入った自慢の商品だから当然アピールしたくなる。発売に併せて、ポップなどの販促ツールを作ったり、とにかく推しまくり。そんなスイーツの数々を目の当たりにするうち『私もこんな商品を作りたい!』と次第に商品開発への興味が強くなっていったんです。そこから営業職を経て、入社から6年目で念願の商品部、しかもスイーツ担当に抜擢。もう本当に嬉しかったですね」


今年の4月からはアイス部門に異動になった浅岡さん。スイーツのように毎週オリジナルの新作開発に追われることがない代わりに、アイスは少数ラインナップの一本勝負。一回の生産数も桁ちがいに多く、失敗は許されない。でも彼女には心強いお守りがあるという。


「先輩や同僚と飲みに行った帰り道に、“スイートポテト”の空き袋が道に捨ててあったんです。『買ってくれた人がいるんだ!』て嬉しくてつい拾っちゃって(笑)、以来手帳に入れてお守り代わりに持ち歩いています」


“ウチカフェスイーツ”で数々のヒット作を生み出した浅岡さん。彼女の作るアイスは早ければ来年売り場に並ぶ。その時はまたたくさんの笑顔が生まれるのだろう。

プロフィール[Profile] 浅岡陽子 [あさおか ようこ]

株式会社ローソン 商品本部 マーチャンダイザー
1985年生まれ。大学卒業後、2008年、株式会社ローソンに新卒入社。店舗勤務、営業職を経て2014年商品部へ異動。“ウチカフェスイーツ”商品開発担当に抜擢され、”スイートポテト“、”レモンケーキ“など、女性目線ならではのヒット作を生み出す。”プレミアムロールケーキ“のリニューアルではロールケーキ生みの親である部長と新旧商品対決、完敗するという苦い経験も味わう。

株式会社ローソン
http://www.lawson.co.jp/

ウチカフェフラッペ
190円~295円〔税込〕

2013年に登場した、レンジであたためて食べる新感覚スイーツ。2016年5月時点のラインナップはマンゴー、チョコレートケーキ、クリームソーダ&メロンソーダ、抹茶あんみつ、スモア(マシュマロ&チョコ)、の5種類。浅岡さんは既に来年の企画開発に携わっているそう。

『ひみつのローソンスイーツ開発室』
著:ハトコ/KADOKAWA・メディアファクトリー

「女性にウケるコンビニスイーツをつくれ! 」コンビニ食品=男性向けだった時代、超重要ミッションを達成すべく選ばれたメンバーは、極上のスイーツをつくるべく立ち上がった!ローソン「ウチカフェスイーツ」が生まれる舞台裏を描くお仕事コミックエッセイ。

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